張込み―傑作短編集(五)/松本清張
――貴紙を購読いたします。購読料を同封します。貴紙連載中の「野盗伝奇」という小説が面白そうですから、読んでみたいと思います。十九日付けの新聞からお送りください……。
表題作の「張込み」から順に、「顔」「声」「地方紙を買う女」「鬼畜」「一年半待て」「投影」「カルネアデスの舟板」の計8篇が収められている。
短編とはいえ、高い完成度であり、大部分はテレビドラマ化されている。
とりわけ印象に残ったのは、「地方紙を買う女」。
上記抜き書きは、この短編からのもの。
一人の女性の葉書を読んで、それを地方で起こった殺人事件と結びつける作家。
関係がないと思われるところを結びつけて、それを事件の解明に結びつける面白さが清張作品にはある。
一見なんのつながりもなさそうに見えたところに、ある関連性が浮かび上がってくる。
離れた点と点を結んで一つの線になる。
線と線が結びついて最後は大きな絵を描く。
この巧妙さは流石と言うほかない。
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