世界一訪れたい日本のつくりかた/デービッド・アトキンソン
パークレンジャーの方曰く、日本の美しい自然をつくりだしているのは、「自然災害」だそうです。
実は日本ほど自然災害の多い国は、そうはありません。
定期的に大きな地震が起きていますし、火山も多いです。梅雨もありますし、地理的にも毎年のように台風が直撃します。これらの自然災害は人間だけではなく、そこに生息する動植物にも、ある大きな影響を与えます。それは「森林が完成しない」ということだそうです。
観光大国になる4条件は「自然・気候・文化・食」だと言われている。
この4条件を満たす国は世界でも指折り数えるほどしかない。
ところが、日本はこの4条件をすべて満たしている稀な国なのだという。
中でも、「自然」はもっともたこくと差別化できる要素だというのである。
日本では、自然はお金にならないと言われることがある
しかし、それは世界の常識に反している。
自然こそ、「稼げる観光資源」。
もちろん見せるだけではお金にならないが、体験、アクティビティ、ホテルなどを工夫することで、「もっとも稼げる観光資源」に変貌させることができる。
どうして日本の自然は多様性に富んでいるのか。
たとえば、自然環境がまったく変わらないと、生物的に強い種が弱い種を駆逐して、どんどん勢力を増していく。
しかし、定期的に大規模な自然災害に見舞われる日本ではそうはいかない。
溶岩が流れてきたり、土砂崩れが起きたり、鉄砲水が発生したりすれば、どんなに強い種もあっという間に駆逐されてしまう。
そうなると、それまで隅に追いやられてきた別の種が台頭するチャンスがめぐってくる。
災害のあとは、それまでの環境が激変する。
この新しい環境に適応できた種がどんどん増えて、それまで強かった種と力関係が入れ替わる。
その後、新たな種がつくった環境に適応できる別の種が増え、サイクルは完成に向かう。
このような新陳代謝が繰り返されるので、弱い種も絶滅ない。
このようなことが何千年、何万年も繰り返されてきたことで、他の国では見られない多様性に富んだ自然ができあがった、と言うのである。
日本人には当たり前と思っているものが外国人には魅力的に見える一例であろう。
その意味で、日本人以外の目で、日本を再発見してもらうのは、有効な手法なのではないだろうか。
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