強き蟻/松本清張
信弘は六十七歳である。八十も九十も生きられたら、ちょっと困る。八十で死んだら、自分が五十、九十で死んだら六十だ。女として老境に入り、だれも相手にしてくれなくなる。せめて自分の四十までか、それをちょっと出たくらいのときに、解放されたいものだった。その年齢だと、また前の水商売ができる。恋愛だっていくらでも出来る。
この小説の主人公は会社重役と結婚した沢田伊佐子。
歳の差30歳。
明らかに遺産目当てである。
彼女はその美貌と肉体を武器に、まわりの男たちを振り回し、利用して自分の欲望を満たそうとする。
お互いが相手を信用せず、あわよくば出し抜こうとする。
犯罪が犯罪を呼んでゆく。
その光景は、砂糖に群がる蟻のよう。
しかし、最後は策に溺れ身を滅ぼしていく。
ドロドロとした人間関係。
まさに清張の真骨頂といったところだろう。
« 現場論/遠藤功 | トップページ | 人生が変わる 心のブロックの溶かし方/牧野内大史 »