あなたに褒められたくて/高倉健
降旗監督が走った姿や、威圧感を感じさせたり、怒鳴ったりする姿を見たことないですよね。大声出したことも人から聞いたこともないんですよね。
だからといって、人を突き放しているのではなくて、俳優のことも、小道具のことも、大道具や照明のことも、衣装のことも、きちっと見てくれているんです。
認めてくれるから、それぞれの人が、それぞれの場で、よりよいものを求めて、必死で駆け回る。
髙倉健のエッセイである。
その中で降籏監督のことに触れた箇所が印象的だ。
降籏監督は高倉健と「駅」「居酒屋兆治」「夜叉」「あうん」を撮っている。
映画監督にもいろんなタイプがいる。
黒澤監督のように強いカリスマ性でみんなをどんどん引っ張っていく監督もいる。
中には怒号飛び交う現場があるという話も聞く。
ところが降籏監督は、撮影中、ほとんど目立たないという。
どこにいるのかさえ分からないというのである。
しかし、あの監督は、ちゃんと見ててくれるって、みんな思っている。
現場には、一心不乱にやってる者もいれば、一心不乱のように見せてる者もいる。
働き者もいれば怠け者もいる。
ところが、みんなが伸び伸びと仕事を一生懸命、思わずしてしまう。
あの監督に褒められたいって、みんな一生懸命走り回って本物をつかんでくる。
それが合わさって良い作品が出来上がる。
これって、凄い才能である。
リーダーシップとは何かということを考えさせられる。
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