吉井理人 コーチング論/吉井理人
僕は投手にいろいろな問いかけをする。体調、感覚、感情がどうなっているかを知るためだ。問いかけをするということは、相手にしっかり言葉で表現する努力をしてもらうということ。最初は自分の状態をうまく言語化できないものだ。それでいい。こちらは言語化する努力が途切れないように、あの手この手で質問のアングルを変えていく。そうやってお互いの距離を縮めていく。選手は知らぬ間に自分で自分を深く省みている。そしてやがて自分の状態を冷静に把握できるようになる。
基本的にスポーツは身体で勝負する。
身体能力やスキルの高さ、戦術などが勝負の決めてになる。
一見、言葉とは無関係のように感じる。
ところがそうではない。
スポーツと言葉とは密接な関係がある。
特に、自分の状態を言語化すること。
これは成長への重要なステップである。
言語化できたとき、初めて問題が明確になり、そのことを意識するようになる。
そして意識して問題に取り組み行動することによって、問題は解決へ向かい、行動は変わっていく。
日本のプロ野球界では「ああしろ」「こうしろ」と一方的に命じることが今も多いという。
でも、これでは選手は何も考えない。
それがプレーにも現れてくる。
考えさせるためには、質問をすることである。
質問をすると、された側は考える。
自分の考えを言語化するようになる。
それが成長につながる。
言語化と成長、密接な関係があると言ってよいだろう。