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2018年4月24日 (火)

ルポ 虐待/杉山春

Photo 悲劇の真因は芽衣さんがよい母親であることに強いこだわりをもったことだ。だめな母親でもいいと思えれば、助けは呼べただろう。「風俗嬢」の中には夜間の託児所にわが子を置き去りにして、児童相談所に通報される者がいる。立派な母であり続けようとしなければ、そのようにして、あおいちゃんと環君が保護されることもあったのかもしれない。

2010年の大阪二児置き去り死事件のルポルタージュである。

3歳の女児と1歳9カ月の男児の死体が、大阪市内のマンションで発見された。

子どもたちは猛暑の中、服を脱ぎ、重なるようにして死んでいた。

母親は、風俗店のマットヘルス嬢。

子どもを放置して男と遊び回り、その様子をSNSで紹介していた。

あまりにも無責任な母親だと話題になったものだ。

しかし、本書を読むとその背景は非常に複雑なものだったことが分かる。

この女性の父親は高校ラグビー部の監督をしていた。

既に妻とは離婚していた。

厳格な父親のもと、厳しく育てられてきた。

その為か、彼女は「母親とはこうあるべき」が強いように感じる。

そのため彼女は母親であることから降りることができなかった。

自分が持つことができなかった立派な母親になり、子供を育てることで、愛情に恵まれなかった自分自身を育てようとした。

だからこそ、孤独に泣き叫ぶ子どもに向き合うことができなかった。

人目に晒すことは耐え難かった。

母として不十分な自分を人に伝えられず、助けを呼べなかった。

結婚当初、彼女の自尊心を支えたのは、家庭であり、夫の存在、健康に育つ子どもたちだった。

不安で自信のない彼女は、あらん限りの努力をしてその虚像を支えようとした。

だが、頑張りは長くは続かない。

理想の姿が崩れかけた時、それでも持ちこたえて、関係を持続することよりも、別の世界に飛んだ。

それが彼女が幼い時から長い時間をかけて習慣としてきた困難への対処方法だったからだ。

しかし、その代償として二人の幼い命が失われた。

あまりにも悲しい現実である。

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