カネと自由と、文明末ニューヨーク/森田靖郎
オバマ型アメリカからトランプ型アメリカへ――その見極めるポイントは、この国の三つの仕組みにある。〝移民法〟〝労働権法〟そして〝医療制度〟である。
トランプ大統領の政策の特徴の一つとして移民問題にメスを入れたことがある。
「メキシコとの国境に壁を作る」を選挙公約に掲げてトランプは大統領になった。
アメリカは、建国理念として、〝民主主義〟〝個人の自由〟〝平等主義〟〝人権の尊重〟そして〝文化的多様性〟を掲げている。
人工国家であるアメリカは、このような理念がなければ国家はまとまらない。
このアメリカ的理念を、普遍的に世界に通用するものだと、アメリカは押しつけてきたきらいがある。
しかし、国家によって成り立ちの歴史や地域性によって、理念は異なる。
当然、他の国民は反発する。
たとえば、イスラム圏の人たちは、アメリカ的理念をそのまま受け入れるだろうか。
アメリカ国民は、さまざまな異文化との衝突で、アメリカ的理念と現実がかけ離れている、このジレンマに、理念はきれいごとに過ぎないと悟ったかもしれない。
あげく、理念のなかでも柱と、もっとも大事にしてきた自由や民主主義も、その実体が揺らぎ始めたのではないか。
建国以来のアメリカ的理念も賞味期限だと悟った人々がトランプ現象を起こしたのではないだろうか。
移民国家アメリカはまず法が先行し次々とやってくる移民に、アメリカ的理念つまり法に従わせることで国家が成り立ってきた。
アメリカにとって、移民にまず法に従わせるかどうかを問う。
移民を同化させるか、さもなければ拒絶する。
そう考えると、アメリカの移民政策は、平等主義、人権の尊重そして文化的多様性などの側面から見れば、アメリカ的理念に反しているともいえる。
移民問題の根底にあるのは、異文化の衝突であり、文明の衝突つまり文明末現象だ。
このような自己矛盾がトランプ大統領を生み出したとも考えることができるのではないだろうか。
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