シャーデンフロイデ/中野信子
その結果、わかったことがあります。それは、「愛」や「正義」が、麻薬のように働いて、人々の心を蕩かし、人々の理性を適度に麻痺させ、幸せな気持ちのまま誰かを攻撃できるようにしてしまう、ということです。
愛は人を救うどころか、それに異を唱える者を徹底的に排除しようという動機を強力に裏打ちする、危険な情動です。
シャーデンフロイデ、耳慣れない言葉である。
シャーデンフロイデという単語はドイツ語で、Schadenfreudeと綴る。
Freudeは喜び、Schadenは損害、毒、という意味。
つまり、「シャーデンフロイデ」は、誰かが失敗した時に、思わず湧き起こってしまう喜びの感情のこと。
シャーデンフロイデはどのような時に現れるのか。
例えば、最近のネット炎上がそうだろう。
有名人がちょっとしたことで失言すると、ネットの住民がこぞって攻撃する。
結果、ネットが炎上し、場合によっては当人が謝罪するということになることもある。
なぜ、攻撃するのか。
それは「我こそは正義」という意識があるから。
自分たちの側に正義があるのだから、不正は正すべきだ、と。
これが過剰で執拗な攻撃につながる。
その意味で「正義」という言葉は免罪符のようなものだ。
「正義」をかざすことで戦争が起こる。
「戦争ほど非人道的なものはない」とよく言われる。
しかし、これは逆ではないだろうか。
人として守り行うべき道を進んでしまうからこそ、違う道を進んでいる人を許せず、争いに発展する。
「正義」とか「愛」といった耳障りの良い言葉こそ、実は思考停止させる言葉であることを自戒すべきだろう。
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