イノベーションを起こす組織/野中郁次郎、西原文乃
旭山動物園の成功の本質は、動物園の動物は「自己実現を求める命ある存在」であるということを、行動展示や共生展示を通して発信し続けているところにあるといえるだろう。動物は展示されるモノではなく、そこで人間と共に生きている存在(コト)なのだ。
今、企業は同じことをしていては生き残れない。
イノベーションがどうしても必要だ。
本書ではイノベーションを起こす組織の実例の一つとして旭山動物園が挙げられている。
旭山動物園の成功は、前園長の小菅正夫と現園長の坂東元が立役者であることは間違いない。
しかしながら、現場の飼育員の動物たちに対する愛情と飼育員同士の信頼。
一方で動物たちの生態に関する正しい知識と豊富な経験が結合したことによって、行動・共生展示が現実になったといえるだろう。
経営トップがどれだけ善い思いを持っていても、どれだけ善い未来像を描くことができたとしても、それを現場で実現する現場のリーダーたちがいなければ、絵物語りで終わってしまう。
つまり、イノベーションを実現するには「現場リーダーの善い目的や思いを起点とした共創の場づくり」と「目的や思いを実現する集合的な実践力」が必要となるということである。
本書ではイノベーションを起こす組織の条件を6つ挙げている。
第1に、参加メンバーがその場にコミットしていること。
ただ人が集まっただけでは、場はできない。
第2に、その場が、目的をもって自発的にできていること。
目的がなかったり、強制されて集まっていたりするのでは、やらされ感があるので、新しい知は創られにくい。
第3に、メンバー間で、感性、感覚、感情が共有されていること。
メンバーそれぞれが持っている暗黙知を解放することで新しい知が創られる。
第4に、メンバー間の関係のなかで、自分を認識できること。
自分が他のメンバーから受け容れられているという安心感や信頼感があることで、暗黙知が解放される。
第5に、多様な知が存在していること。新しい知を創るには、多様な知が必要となる。
同じ知を掛け合わせても同じ知しか出てこない。
第6に、場の境界は開閉自在で常に動いていること。
境界がいつも閉じていると、メンバーだけの知識で閉じてしまうことになり、多様性が失われてしまう。
境界を開くことで、多様な知を新たに取り入れることができる。
イノベーションとは、既存の静態的な均衡を破ることである。
言い換えれば、イノベーションは、対立や葛藤を「あれかこれか」の二項対立としてとらえるのではない。
状況に応じて「あれもこれも」の二項動態のチャンスととらえること。
いわゆるWin-Winの状態をつくって対立や葛藤を超えていくことである。
イノベーションを起こす組織作りを多くの企業は目指すべきではないだろうか。
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