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2018年8月17日 (金)

翔ぶが如く(2)/司馬遼太郎

Photo やがて西郷が出てきた。
 山県は一世一代の雄弁をふるい、廃藩置県の必要を説いた。喋りはじめると、とまらなかった。西郷はそれを最後までじっときいていた。山県はやがて、「貴意やいかに」ときいた。
 西郷は木戸さんのご意見はいかがです、ときいた。山県はじつはまだ木戸にうちあけていないというと、西郷はうなずき、
「私のほうはよろしゅうございます」
 と、鄭重に答えたのには、山県はあっけにとられる思いであった。山県はかえっておびえ、念を押すと、西郷はもう一度うなずき、おなじ返事をした。
 廃藩置県という空前の変革は西郷の一言で済んでしまった。

西郷隆盛がもし廃藩置県に反対していたら、明治政府の政策は大きく躓いたかもしれない。

それほど、西郷の影響力は大きなものだった。

「西郷は哲学をもっているという点でこの国の歴史に出現した最初の政治家であった」と著者は述べているが、その通りなのかもしれない。

同時にそのことが、西郷がこの国に生まれたことの不幸にもなっている。

西郷は精密な哲学書を書いたわけではなかった。

しかしその日常の起居動作から政策論、歴史観にいたるまでいっさいが論理的有機性と精密さを持っていた。

その場かぎりの言動というものはなく、しかも行動というその文体は感性のゆたかさからきた豊潤さをもっていた。

西郷のような、いわば存在することによってすでに世間的威力をもつという男は、その実態が何ものかということがわかりにくい。

斧をふりあげてたち割ってもなにも出て来ないかもしれない。

ただ、その得体のしれない大きさが西郷の魅力となり影響力となったのかもしれない。

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