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2018年11月 7日 (水)

辞令/高杉良

Photo「皆んなあきらめてるさ。しょせん小林商店じゃないの」
「次期社長ってこともあり得るんでしょうか」
「血は水より濃いっていうから、次はともかく、次の次ぐらいに考えてるかもしれないぞ。オーナー社長っていうのは、どんなぼんくら息子でも、後を継がせたくなるものらしいからね。神ならぬ人間の弱さとでも言ったらいいのかなあ。きみにしたって、俺にしたって、そんなことは百も承知で、エコーに入社してきたんだから、いまさら顔をしかめたってしょうがないよ」

サラリーマンならだれしも経験する人事異動。

主人公の広岡修平は大手音響機器メーカー、エコー・エレクトロニクス工業の宣伝部副部長。

突然の左遷の内示を受け、衝撃を受ける。

正義感と情熱にあふれ、第一選抜で進んできた広岡に失策はなく、左遷される理由は思い当たらない。

自ら調査に乗り出すとオーナーである小林一族の思惑に行き当たる。

二万人の社員を擁する大企業でありながら、世間からは「小林商店」と見なされている。

会長の小林明の強力なリーダーシップとファミリーの存在。

人事は公平であるべきだが、小林の妻信子、次男の秀彦らのわがままと、その意向を忖度する幹部たちが公平性を歪めていく。

しかし、こうした同族企業は国内外にあまたある。

中小企業などはほとんどが同族企業といってよいのではないだろうか。

同族企業にも良い点はある。

多くの同族企業は、企業価値を大きくするということよりも、企業の永続を求めることが多く、そのため、長期的な視野からよい経営を考えることが多いという点である。

しかし、どうしてもオーナーの顔色を見る人事がまかり通るという面もまた事実であろう。

特にこの小説の主人公の広岡のような正義感に溢れ仕事のできる人材にとっては生きづらい会社なのではないだろうか。

広岡は持ち前の正義感で異動先の人事畑でも奮闘するが、最後には関連会社へ出向の辞令が出る。

妻の言う「寄らば大樹の陰」でエコーに踏みとどまるのか。ここで思い切って転職するのか。

「人間到るところ青山ありだ」。

そう思い至る広岡。

アンフェアな人事でパズルのピースのように動かされ、あおりを食う名もなきミドル。

現実にも無数の広岡が同様に思い悩んでいるのではないだろうか。

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