世界史88の裏側をのぞく/裏世界史研究会
パリのルーブル美術館にあるミロのヴィーナスは、世界的に有名な古代ギリシア彫刻。1820年にエーゲ海のギリシア領メロス(ミロ)島の畑で、農民によって発見された。この像の特徴は2本の腕が欠けていることで、発見当時にすでに欠けていた。それだけにほんとうはいったいどんなポーズをとっていたのか、大いに人びとの関心を集めている。
歴史は過去に起こったことの記録だ。
しかし、その見方、解釈は様々。
だから「裏世界史」なるものが出てくる。
例えば、万有引力を発見したといわれるアイザック・ニュートンは、意外にもオカルト的なものにたいへん興味を持ち、錬金術などの研究に没頭していた、とか、
あの有名なリンカーンの「人民の、人民による、人民のための政治」で締めくくられている演説は、リンカーンのオリジナルではなく、ずっと昔の記録に残っていた、とか、
ドーピングなどの不正疑惑がたびたびもち上がる現在のオリンピック。ところが、そのルーツになった古代オリンピックも不正に満ちあふれていた。
といったことが本書で紹介されている。
例えば、ミロのヴィーナス、
両腕が欠けている像である。
ではなぜ両腕が欠けたのか。
様々な説がある。
最もよく知られているのがドイツの美術史家アドルフ・フルトヴエングラーの説。
彼はミロのヴィーナスの欠けた右手は左腰にあてがい、石柱に支えられた左手には丸い果物を持っていたと考えた。
ヴイーナスとともに発見された腕の断片は、リンゴを持った彼女の手にちがいないと推理。
また、台座は画家ドベエのデッサンに描かれたような銘文入りの台座だったとしている。
一方、ハッセは、ヴィーナスは左手で髪をとこうとしていて、手にはリンゴではなくてヘアバンドを持っていたと推理。
また、ファレンティンは、水浴中にのぞき見られて驚いたヴィーナスが左手をあげたところだと考えた。
さらに、ミリンジェン、クララック、ミュラーなどの19世紀前半の学者たちは、ヴィーナスは両手に金属製の丸い盾を持っていて、そこに映る自分の姿にうっとりしていたと推理。
これに対して、ヴィーナス像は単体ではなく、カップル、あるいはグループ像だったという説もある。
ただ、何れも仮説である。
でも、このような仮説がいくつも出てくるところに歴史の面白さがあるのではないだろうか。
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