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2019年1月10日 (木)

西郷隆盛 維新150年目の真実/家近良樹

Photo 西郷は、想像の余地のない満月ではなく、どの程度かはともかく「欠けた月」だったと見なせる。そのぶん、「余白」があり、われわれの先人たちは、「余白」部分に自分の好きな色を思い思いに塗ったり、言葉を自由に書きこんだりしてきたのである。

西郷隆盛は国民的な人気がある歴史上の人物である。

ところがその理由となると明確に言える人はいない。

むしろ、つかみどころのないところが人気なのかもしれない。

西郷は 真に不思議なキャラクターの持ち主で、他人の前で男は涙を見せてはいけないという不文律のおそらく存在しただろう時代にあって、平気で涙を流せた男であった。

昨年のNHK大河ドラマ「西郷どん」でもやたら涙を流すシーンがある。

西郷という人物は、手先は器用だが、生き方は真に不器用そのものであった。

西郷は、逞しい肉体を持つ大男で、時に鋭く光る巨眼も有したため、豪傑風で一本気に見えた。

しかし、実際に彼を目撃した人物の多くが伝えるところによると、威風堂々といった素振りはまったく見せず、むしろ内省的な趣の感じられる人物だったらしい。

西郷に対する国民的人気をもたらした理由の最後のものとして挙げられるのは、彼が悲劇的な最期を遂げたことであろう。

明治6年、征韓論をめぐる対立に敗れて下野し、明治10年に悲劇的な死を迎える。

大久保政権の進める酷薄な近代化政策に抵抗した解放者として、その死が惜しまれた。

そして、なにより、故郷の城山での自死という悲劇的な死に方が、多くの国民の同情心を呼び起こした。

英雄として広く民衆の間に受け入れられる条件については、昔から諸説があるが、その内に、悲劇的な最期を迎えるとの条件が含まれる。

西郷の場合は、すくなくとも、この条件がピタリと当てはまったからこそ、彼をして未曾有の人気者の座に就かせることになったのではないだろうか。

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