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2019年1月23日 (水)

台湾とは何か/野嶋剛

Photo 台湾にいると、しばしば、こんな話を聞く。「中国兵がやってきたら、鍋をかついで歩いていたので、えらく失望した」。あの時代、本当に鍋をかついだ兵士をみんなが目撃したのかどうか、怪しい部分もある。しかし、あまりにも多くの日本語世代からその話を聞かされるにつけ、私はこの問題が「記憶の共有」の結果であると思うようになった。つまり、「前近代的な中国」への嫌悪が「鍋をかついた中国兵」によって象徴されているのである。そうなると祖国愛よりも、「前近代」への軽蔑が先にやってくる。その結果、「近代」を経験した日本時代への郷愁が高まったという構図である。

台湾は親日国として知られている。

同じように日本に統治された韓国は言わずと知れた反日国である。

どうしてこんな違いが生まれたのか。

その理由の一つは、日本の後からやってきた中国があまりにもひどかったからというもの。

日本の統治も中には酷いものもあったのだろう。

だが比較の問題として「中国よりはましだった」ということで親日国になった。

明治維新を経験した日本は、欧米からの制度や技術の輸入による近代化を成し遂げ、清朝を戦争で打ち破り、台湾経営に乗り出した。

日本の統治は苛烈なものだったが、日本が台湾に移植したものは、日本自身が学んだ近代だった。

そこでは、限界はありながらも、言論の自由や法の支配、教育の普及、行政の平等主義などが実現され、統治50年を経験した台湾には、そのエッセンスがすでに根づいていた。

ところが、敗戦によって日本が去り、中華民国がやってきた。

大陸の中国人は、前近代の世界に生きていた人々だった。

つまり中国と共に前近代がやってきた。

だから「あの頃の方がよかった」と親日国になったというのである。

親日国家、台湾の背景には、中国に象徴される「前近代」への軽蔑と、「近代」を経験した日本時代への郷愁があるという。

このあたりのことは台湾で生きている人にしかわからない複雑な心情が内在しているのだろう。

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