英国人記者が見た 世界に比類なき日本文化/ヘンリー・S・ストークス、加瀬英明
安倍内閣が「女性が輝く時代」をつくろうとして、閣僚や、官庁の幹部に、より多くの女性を登用しようと努めているが、日本は、とくに飛鳥から平安までの時代は、まさに女性が輝く時代だった。このような伝統から、武家社会になってからも、女性たちは母、あるいは妻として力を保ち続けた。
英国人であるストークス氏によると、日本は海外では誤解されているという。
例えば、海外メディアは、日本といえばひどい男尊女卑の社会で、女性は家庭でも、社会でも、ひたすら虐げられてきたように描いている。
しかし、「日本は男尊女卑社会」という俗説は、まったく事実に反する。
日本では古代から、あの時代の世界でほかに類例がないほど女性が輝く社会をつくっていた。
『源氏物語』は、女性が人類ではじめて書いた小説だ。
その高度に洗練された点からいっても、文学史上の金字塔といえる。
平安時代の貴族生活における、男女の細やかな心の働きを描いているが、男たちが女性の心をとらえようと、努めている。
女性が男性の上に、立っているのだ。
女性たちが、男に負けることが、まったくなかった。
日本では欧米で「レディーズ・ファースト」といって女性を立てるから、女性上位であるように思い込んでいる人々が多いが、これは大きな誤解だ。
「レディーズ・ファースト」は女性が男より劣っていて、弱くて、一人立ちできない、保護を必要としている者として扱わなければならないという前提がある。
そこで、男性が「上から目線」で女性を守り、さながらペットを扱うように優しく振る舞うことが、求められてきた。
これは、男性が女性よりも優っているという「ハンデキャップ」に基づく差別によるもので、男女が対等だと認識しているわけでは、まったくない。
だから、欧米人が日本にしばらく住んでみると、女性が強い国だということを、知るようになるという。
欧米では妻が、夫から小遣いをせびるのに、日本では逆に夫が、妻に小遣いをせびる。
ところがこれが欧米には伝わっていない。
だから、日本は女性の地位が低い男尊女卑の国だと誤解されている。
日本に足りないのはむしろ発信力なのかもしれない。
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