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2019年5月 9日 (木)

歪んだ正義/宮本雅史

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 特捜部長経験者の分析はこうだ。
「最初から、事実に忠実な構図を描くのではなく、内偵捜査で得た情報から『この事件はこうなる』『こうなるに違いない』『こうすれば大きな事件になる』……というように、自分で事件の構図を作ってしまう。それが当たればいいが、外れるとどんどん違う方向に走ってしまう。当然、軌道修正が必要だが、これがまた証拠に沿って軌道修正するのではなく、マスコミなどを使って、当初描いた構図に近づけようとする。無理な捜査に走ってしまうのは当然だ」


「法律のプロ」を自認する特捜検事がそんなばかな……と耳を疑ってしまうが、近年の事件を再度検証すると、確かにそうした可能性を否定できない。

日本の司法制度では、裁判所が最終的な法的判断を下すが、検察庁は被疑者の処罰をこの裁判所に求める機関で、行政権に属する。

ただ、通常の行政組織は、総理大臣を頂点に指揮監督が確立されているが、検察組織は、法務省から独立して権限を行使できる特別な機関と位置づけられ、その権限の在り方や組織形態は、ほかの行政組織と大きく違っている。

検察庁法は第一条で「検察庁は、検察官の行う事務を統括するところとする」と定め、その事務とは検察庁が行う事務ではなく、検察官個人の行う事務としている。

さらに同法第四条は「検察官は、刑事について、公訴を行い、裁判所に法の正当な適用を請求し」とし、同法第六条は「検察官は、いかなる犯罪についても捜査をすることができる」と定めている。

つまり、すべての検察官は公訴権を独占し、起訴、不起訴の裁量権を有し、必要があればいかなる犯罪についても捜査できる権限を持つなど、きわめて強大な権限を与えられていることになる。

問題はこの強大な権力を間違って使ってしまうこと。

本書を読んでみると、特捜検察の手法はまさに「何でもあり」である。

最近は積極的に事件捜査を展開するためか、意図的にリークをして世論をあおるケースが目立つという。

しかも刑事事件として立件できない場合は、世論を動かすことで社会的責任をとらせようとする傾向が強いようにさえ感じるというのである。

情報をリークしながら、片や情報源の特定にガセネタを流して犯人探しをする。

すべてが特捜部、さらには検察当局の手の中で踊らされている。

特捜部による世論操作は、いつの時代になっても当然のように引き継がれていると言っても過言ではない。

そして、その実態を知るにつれ、その強大な権力を背景に捜査に切り込む特捜部の「絶対性」と「おごり」を感じずにいられない。

まさにこれは本書のタイトルにあるように「歪んだ正義」ではないだろうか。

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