人を動かす方法/デール・カーネギー
人を動かす秘訣は、この大空のもと、たったひとつしかない。そんなふうに思ったことはおありだろうか。そう、方法はたったひとつ。それは、相手に「自らそれをしたい」と思わせること。
もう一度言う。方法はそれしかない。
本書には人を動かす原理原則が書かれている。
その秘訣とは何か?
それは相手に「自己重要感」を与えること。
そしてそれによって「自らそれをしたい」と思わせること。
この自己重要感への欲求こそが、ディケンズに不滅の傑作群を書かせ、名建築家のクリストファー・レンに壮大な石の交響楽を設計させ、ロックフェラーに使い切れないくらいの巨富を築かせた原動力である。
金持ちが、必要以上に大きな邸宅を建てるのもこの欲求のためであり、人びとが最新流行のファッションを身につけたがるのも、ぴかぴかの新車を乗り回すのも、わが子自慢をするのも、すべてこの欲求のせいである。
たとえば、ジョン・ロックフェラーが自己重要感を満たす方法は、会ったことも会うこともない中国の貧しい人たちのために、近代的な病院を北京に建てる資金を提供することだった。
一方、デリンジャーは悪党になり、銀行強盗や殺人を犯すことによって自己重要感を満たした。
捜査官に追われてミネソタの農家に逃げこんだとき、彼は「おれはデリンジャーだ!」と言った。
自分が社会の敵ナンバーワンであることに誇りを持っていたのだ。
「おれはお前たちを傷つけたりしない。だが、おれはデリンジャーだ!」そう彼は言った。
そのとおり、デリンジャーとロックフェラーとの大きな違いは、自己重要感を満たすために取った方法の違いだけである。
専門家によれば、厳しい現実世界において自己重要感を見つけることができず、非現実的な夢の世界でそれを見つけようとして、実際に精神を病んでしまう人さえいるそうだ。
自己重要性を渇望するあまり狂気の世界に入りこんでまで手に入れる者がいるのなら、正気の世界で心から認めてあげれば、どれだけの奇跡を起こすことができるか想像してみるといい。
私たちは子どもや従業員に対して身体に必要な栄養は与えるが、彼らの自己評価に必要な栄養を与えることはめったにしない。
他の人を動かす方法はこの世にひとつしかない。
相手が欲しいものを話題にし、それを手に入れる方法を教えてやることだ。
そしてその欲しいものとは自己重要感である。
人を説得する力をつけたいのなら、それが仕事場でも家庭でも学校でも政治の世界でも、最良のアドバイスはひとつ。
相手にそうしたいと思う強い欲求を起こさせることだ。
それができる者は世界を味方につけ、そうでないものはひとり寂しく道を歩むことになる。
この1点を守るだけでも自分のまわりの人間関係は劇的に変わるのではないだろうか。
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