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2019年6月12日 (水)

日本人の勝算人/デービッド・アトキンソン

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 アメリカの生産性は1990年代に飛躍的に向上しました。一方、日本の生産性は、まったくと言っていいほど上がりませんでした。なぜこの違いが生まれたのでしょうか。それは、アメリカでは多くの企業が技術革新の効果を最大限に引き出すために、組織を大幅に刷新し、仕事のやり方を大胆に変えたのに対し、日本では技術導入はしたものの、組織や仕事の仕方に手をつける企業が少なかったからです。そのため、日本は生産性を上げることができなかったのです。


日本で今まさに起きているパラダイムシフトの原因は、人口減少と高齢化だ。

日本では、これから、人類史上いまだかつてない急激なスピードと規模で、人口減少と高齢化が進む。

人口が右肩上がりで増えるというパラダイムが、右肩下がりに減るというパラダイムにシフトしたのである。

日本は少子高齢化と人口減少問題を同時に考えなくてはいけない、唯一の先進国である。

これが重要なポイントだ。

高齢化が進めば進むほど、介護などの需要が高まり、人を多く要する生産性の低い仕事が増え、ひいては格差が広がることも考えられる。

このことは、生産性向上に悪影響を与え、所得の上昇をさまたげる。

総括すると、日本は社会保障のためにGDPを維持する必要があるが、人口減少と高齢化によって需要が構造的に減る。

日銀は銀行に流動性を供給しているが、民間のニーズがないため、このままでは流動性が市中に流れない。

そうであるならば、個人消費を増やすための別の政策が必要になってくる。

それが「賃上げ」だ。

通貨量をきちんと増やしながら、賃上げを継続していく。

それができれば、総需要は縮小せず、モノとサービスの均衡が回復して、インフレを実現することも可能だ。

このパラダイムシフトは、デフレ圧力を吸収し、日本経済を活性化する。

日本でGDPを減らすのは自殺行為だ。

結局、何をどう検討しても、人口減少・高齢化による総需要減少を、賃上げによって相殺するしかない。

それには生産性を向上させ、付加価値を高めていくしかない。

論理的に分析すればするほど、結論はここに辿り着く。

「いいものをより安く」という戦略は、人口が増加している時代には非常によい戦略だった。

いいものをより安くすると新しい需要がどんどん生まれるので、単価は下がるが、それ以上に売上が増える。

最終的には利益額も増え、皆が得をする戦略だった。

よりたくさん売ることによって、規模の経済も働く。

しかし、「いいものをより安く」という戦略は、厳しい言葉で言うと、優秀な労働者さえいればどんなバカな経営者にも可能な戦略だ。

その分、労働者に大きな負荷がかかる。

2016年の World Economic Forum のランキングによると、日本の人材評価は世界第4位だ。

本来であれば、ここまで人材の評価の高い国であるならば、人材を上手に活かしさえすれば、大手先進国で最高水準の生産性と所得水準を実現するのも可能なはずだ。

にもかかわらず、現在の体たらくに、長年の人口増加が生み出した日本の経営者の無能さや国民の甘えが如実に表れている。

日本以外の国では、生産性と人材評価の間に強い相関関係がある。

また、人材評価と最低賃金にも深い関係がある。

しかしながら、日本だけは人材評価が高いのに、最低賃金が低く、生産性も低い。

低い生産性の問題、国の借金の問題、財政再建の問題、福祉制度の問題、ワーキングプアの問題、女性活躍の問題、子どもの貧困の問題、少子化の問題、消費税の問題、地方創生の問題。

日本には実にたくさんの深刻な問題がある。

しかし、これらの問題の根っこはたった1つ。

最低賃金が低いこと。

ここにすべての問題の根源がある。

と、これが著者が本書で訴えていることだ。

正確な分析に基づく主張なので、説得力がある。

問題は、経営者をどう動かすかだろう。

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