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2019年6月 9日 (日)

最高のコーチは、教えない。/吉井理人

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「おまえ以上におまえのことを知っているのは、このチームにはいない。だから、おまえのピッチングについて、俺に教えてくれ。そのうえで、どうしていくのがベストの選択かは、話し合いながら決めていこう」


著者である吉井氏が選手時代、メジャーに移籍した時、ニューヨークメッツののアポダカコーチからこう言われて驚いたという。

なぜなら日本でコーチからそんなことを言われたことがなかったからだ。

日本では、コーチが自分の尺度で選手を見て、自分の尺度に合わなければ自分がやってきたように修正するのが一般的だ。

ところが、アポダカコーチは、吉井選手がどんなピッチングをやりたいかをはじめに聞き、その方向性に沿ったアドバイスをしようと考えた。

アポダカコーチの言葉を聞いて、著者はこの国でやっていけるかもしれないと思ったという。

どうすれば相手のモチベーションを高め、能力を引き出し、高い成果を挙げることができるのか。

これはアスリートに限らず、部下を持つ上司の最大のテーマだ。

そのカギを握るのは、「教える」のではなく、自分の頭で考えさせるように質問し、コミュニケーションをとる「コーチング」という技術にある。

コーチのアドバイスは、本来、選手にとっては邪魔なものである。

だからこそ、コーチは自分の経験に基づいた言葉だけでアドバイスするのは避けるべきだ。

選手の言葉の感覚をしっかりとつかみ、その感覚でアドバイスしてあげなければならない。

重要なのは、常に選手を観察することだ。

観察し、その変化に敏感にならなければならない。

そして上手に質問し、選手に考えさせ、それを言語化させる。

自分のパフォーマンスをうまく言語化できる選手は、調子の波が小さい。

言語化がなかなかできない選手は、調子の波が大きい。

調子が悪い状態をうまく表現できなければ、コーチも対処のしようがない。

そのため、なかなか悪くなった状態を改善することができない。

海外のチームスポーツの人たちには、ケミストリーという意識が強くある。

日本語に訳すと化学反応という意味だ。

化学反応は、個と個が交じり合うことで、別の何かが生まれることを指す。

あくまでも個人がベースとなり、その強みが交じり合うことでチームに変化をもたらし、それが勝利につながるという考え方だ。

日本は違う。

チームのために個を殺す。

チームワークという言葉は同じでも、その意味するところは真逆である。

スポーツの世界でもビジネスの世界でも、育成の仕方について転換期にきているのではないだろうか。

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