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2019年6月29日 (土)

親から始まるひきこもり回復/桝田智彦

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 人間には本来、生きる本能と自己実現に向かう欲求が備わっています。その活動がひきこもり状態や心の不適応という形で一時的に停止しても、それらを育む環境が整えば必ずまた動き出します。その環境を育み続けるために親の成長、すなわち「親育ち」が必要なのです。


今、ひきこもりが問題になっている。

特に中年引きこもりが深刻化している。

かくいう私自身他人事ではなく、息子はひきこもりの状態が続いている。

ひきこもり状態にいる青年たちは、同年齢集団と比して遅れをとっていることを非常に気にしている。

他人からみれば「取り戻し可能な遅れ」であることが多いのだが、当の本人にはそう思えない。

「そう思えない」苦しさを誰にも理解されないから余計に焦る。

人間には生得的に「承認欲求」というものが備わっている。

それは、家庭という小さな社会でも、学校や会社という社会でも同様に無意識に欲する欲求だ。

そして、その欲求の故に、一度は働きだすこともある。

しかし、「~しなければ」という思いで頑張って働いても、壁にぶつかり、うまくいかず、また引きこもり状態に戻る。

このようにして、ひきこもり状態に戻ると、疲れ切った本人は頑張ったのに報われなかった結果にがっかりする。

その現実を見た親や親族もがっかりする。

そんな親の姿や言葉を見聞きした本人がまたがっかりする。

こうした負のスパイラルを体験すると、人間は自分が何をやってもダメな人間であると考えてしまう。

これを心理学では「学習性無力感」といい、無力感が固定化してしまうことで、ひきこもりが長期化する。

だから目指すべきは、have to~(~しなければ)ではなく、want to~(~したい)の本能的な欲求を育むこと。

この欲求を通して未解決の問題を親と一緒にクリアにしていくことで、

「自分が自分で良い。そして、世の中からもそう思われているであろうという確信」、

すなわちアイデンティティの獲得を果たし、本能的な欲求に基づいた自己実現欲求の道へ向かう。

このことが、ひきこもりの回復の姿であるといえる。

ひきこもり回復のプロセスは、「希望」→「意思」→「目的」→「有能性」→「アイデンティティ」と説明できるという。

心理学では、人間が生きていく最も基礎の部分に「基本的信頼感」を置く。

この基本的信頼感は親との間に生まれるものであり、これがきちんと育まれ担保されていれば人間は「人を信じる力と自分を信じる力」を発揮するといわれている。

焦る気持ちを抑えて、まず親子の信頼関係をしっかりと構築すること。

時間はかかるが、これがひきこもり回復の最も確実な道だということであろう。

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