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2019年6月15日 (土)

人に困らない経営/森本尚孝

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 企業を構成する要素はさまざまだが、社員はその中でも次元の違う存在である。社員一人ひとりは会社そのものであり、社員一人ひとりの一挙手一投足が会社を代表している。


著者が社長を務める三和建設は、1947年に創立された創業70年を超える中堅ゼネコンである。

社員数は125名。

三和建設の経営理念は「つくるひとをつくる」というもの。

経営理念でうたっていることは嘘でなく、まさに人を大切にする経営をしている。

重要なことは、個別の取り組みの有効性や独自性ではなく、それらを貫く基本理念にこそある。

企業経営における基本理念を明確化し、その経営理念について個別の施策の一貫性を担保する経営手法は理念経営と呼ばれる。

著者は「つくるひとをつくる」という経営理念をつくるにあたり、三つのことを考えたという。

第一に、「誰もが簡単に諳んじることができるほどにシンプル」な経営理念にしたいと考えた。

第二に「全社員にとって共感でき、かつ等距離に当事者性がある」言葉にしたいと考えた。

第三に、「時代を超えた普遍性がある」ものにしたいと考えた。

そして経営理念を具現化するために、次のことを行っている。

一つは、ひとたび社員として迎え入れたら、その人に能力があろうがなかろうが、なんとしても活躍の可能性を追求するということ。

もう一つは、社員の新規採用は、会社のためではなく、既存社員のために行うということである。

経営理念の策定以上に重要なのは、その運用である。

重要なことは、①経営理念の意味づけ、②経営理念と実際の取り組みとの整合性確保、の2つである。

まず①経営理念の意味づけについてであるが、経営理念は単なる言葉に過ぎないので、そこに意味をもたせ、その概念を広げていく努力が必要である。

そのためには、経営者自身の責務として、とにかく理念を繰り返し伝えていかなければならない。

同じことを繰り返し伝えることを面倒くさがる人は多いが、誰にどう思われようとも必要なことは何回でも繰り返すべきである。

そして、②経営理念と実際の取り組みとの整合性確保については、経営理念をあらゆる取り組みや事象と無理やりにでもくっつけていく。

実際、三和建設の取り組みはすべて「つくるひとをつくる」という経営理念と直結している。

例えば、多くの会社は、売上・利益を拡大したいという目的がある。

それを実現するために社員一人ひとりの活躍が必要だと考える。

これは社員の活躍を、売上・利益という目的を達成するための手段と考える経営の思考プロセスである。

もちろん、これが悪いといっているわけではない。

しかし、三和建設の場合は、まったく逆の順番になる。

すなわち、「つくるひとをつくる」という理念にもとづいて、社員を活躍させるという目的がある。

そして、すべての社員が活躍するために売上と利益が必要となる。

つまり、売上と利益は手段なのである。

売上のために社員が必要なのではなく、社員活躍のために売上が必要であるというのが三和建設のスタンスである。

それが「人に困らない」経営という結果につながっている。

経営理念が飾り物となっている企業が多い中、三和建設の理念経営の取り組みは、多くの気づきを与えてくれる。

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