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2019年7月18日 (木)

世界史を「移民」で読み解く/玉木俊明

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 重要なのは、「移民」が現代社会にとどまる現象ではなく、これまでの人間の歴史を通して見られた普遍的な現象だと認識することである。そうしなければ、移民問題への対策など、とれるはずもないからだ。


今、「移民」が世界的な問題になっている。

アメリカの不法移民の問題は、依然として大きな問題となっている。

こちらは「難民」だが、現在のヨーロッパには、2014年以来、ヨーロッパにきた難民のうち、180万人もの人々がまだ残っており、それが世界的な問題になっている。

その数は、2014年が20万人強、2015年が100万人強、2016年が40万人弱、2017年が20万人弱であり、かなりの難民がヨーロッパに流入していることがわかる。

ヨーロッパの受け入れ国としてはドイツが最大であり、ハンガリー、フランス、イタリア、スウェーデンがそれに次ぐ。

難民の出身国は、シリア、アフガニスタン、イラク、パキスタン、イラン、ナイジェリアと続いている。

しかし、「移民」の問題は今に始まった問題ではない。

むしろ、歴史とは「移動する人々」のまさに一歩一歩によって、築き上げられてきたものに相違ない。

忘れてはならないのは、歴史上、「移民」は必ずしも自分たちの利益や目的のためだけに移住したのではなかったことである。

戦争や迫害、さらには奴隷になったため、「移民」となることを余儀なくされる人たちは、昔から多かった。

彼らは、苦労もあっただろうが、移住した先で自らの持つ技術・文化などを伝え、社会そのものを新たに変貌させることに貢献してきた。

世界史とは、こうした「移民」が築き上げてきたものの集積だと言って過言ではあるまい。

定住民が築いた文明圏に、他地域から人々が移住してくる。

さらにそこに住んでいた人々が、今度は別の地域に移動し、その文明の価値を伝える。

この繰り返しによって、文明圏が拡大していく。

おそらくこれこそが、人類が誕生して以来、居住地を爆発的に増やしていった方法だったと考えられる。

人類は、決して定住することだけを選択したわけではなかった。

移住することを選んだ人たちもいた。

だが、この2タイプの人類は、まったく関係がないわけではなかった。

ある地域から別の地域へと移動した人々のうち、移動を続ける人もいれば、その地に定住する人もいた。

移動を続けた人々もやがて定住したし、定住を選んだ人々も、いつかはその土地を去った。

「移民」とは、人々を繫ぐ働きをしており、文明を伝播させ、新しい文化や技術、食物、生活様式などを広めた人々であった。

人類は多様な地域に居住しているが、「移民」がいたからこそ、異なる場所に住む人同士が、結びつくことができた。

さらに強制的に移住させられた黒人などの「移民」の犠牲によって、人々が豊かになったことも忘れてはならない。

このような歴史を踏まえて「移民」の問題を考える必要があるのではないだろうか。

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