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2019年7月12日 (金)

この地獄を生きるのだ/小林エリコ

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 私はうつむきながら、自分に感動していた。どんな映画よりも、どんな本よりも、どんな音楽よりも、私の人生は美しく、感動的じゃないか。病気になったことも、死にかけたことも、人から見放されたことも、すべて大切なことなのだ。


著者が自殺未遂をするまで勤めていた会社はまさにブラックである。

お金がないこと、仕事が多すぎること。

働いても、働いても12万円しかもらえないこと。

国民健康保険に入れなくて、東京にいるのに故郷の父の保険証を使わなければならないこと。

いくつもの不安が重なって著者は自殺未遂を起こした。

自殺未遂を起こして実家に戻ったとき、著者は21歳だった。

東京のアパートで大量に薬を飲んで寝ているのを友人が発見し、救急車で大学病院に運ばれた。

3日間、意識不明で生死の境をさまよったのち、一命をとりとめた。

その後、入院生活が続き、退院してからは生活保護を受けることになる。

働かなくてもお金がもらえるのが生活保護。

しかし、その状況を著者は「最低」だと感じる。

どこにも所属せず、何の役割も持たず、果たすべき役目もない人生。

空っぽで虚無。

仕事というものは、どこかで誰かの役に立っている。

その対価としてはじめてお金がもらえるはずなのに、自分は何もしていないのにお金を得ている。

一体何のために私は存在しているのか。

そんな自問自答が始まる。

そしてもう一度働こうと決意する。

ある時、NPOから連絡が届く。

「漫画の単行本の制作を手伝ってほしい」と。

そこから今につながっているということだが、現在も精神科に通院しながら働いているという。

働くことはお金のためだけではない。

著者がいうように、働くことによって「自分が社会に必要とされている」ということが実感できるようになる。

これが大きいのではないだろうか。

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