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2019年7月11日 (木)

戦後入門/加藤典洋

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 私は、もうこれまでのような、またいまも散見される、つまみぐいのような「戦後」についての語り方はやめたほうがよいと思っています。「日米同盟」を動かしえない前提と考える〝現実論〟も、現実に立つというのであれば、その基盤が失われ、耐用期限を過ぎつつあることを直視すべきだろうと思っています。

著者が提案しているのは、「国連中心主義」であり、その基本は、近隣アジア諸国との友好関係と信頼関係の構築である。

中国、韓国、東アジア圏の国々とのあいだに新しい互恵関係を作る。

そのための新しい立地条件を得、「国連中心外交」をする。

国防と安全保障の方策は、その同盟先を「米国」から「国連」に代える。

憲法9条については、その「高邁な理念」、理想主義的な側面は、たとえどんなに非現実的だといわれても、捨ない。

それはどんなに非現実的であろうと、そこに「理念」としてあることに、私たちにとってのかけがえのない意味がある。

憲法9条の「理念」としてのかけがえのなさを、戦争と切り離して語るのでなければ、それは「理念」としてもはや広範な人々に働きかけないし、普遍的ではない。

そして、誇りある国づくりを国連中心主義と国際主義と平和主義の価値観に立って進めることこそが、戦後の国際秩序のなかで、「名誉ある地位」を占め、国民のプライド欲を充足させる、もっとも健全な方法、唯一の方途なのだと。

新書版で640ページという紙面を割いて著者はこのことを主張する。

一読して、著者の主張するところは理解できるが、どう考えてもリアリズムに欠ける。

憲法9条を堅持して米国追随をやめ、国連中心主義に切り替えるというのは、やはり理想主義の域をでないのではないだろうか。

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