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2019年7月26日 (金)

イーロン・マスクの野望/竹内一正

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 アップル社のスティーブ・ジョブズは、普通の人が使えるコンピュータを目指しマッキントッシュを生み出し、世界を変えた。イーロンは普通の人が乗るロケットを目指し、地球以外の惑星移住を可能にしようとしている。


「人類を火星に移住させる」。

これこそイーロンの究極のゴールだ。

地球の人口はすでに70億人を突破し、今世紀半ばには100億人にも届くだろう。

しかし、二酸化炭素は増加し温暖化は進み、異常気象は頻発し、水不足や食糧危機が叫ばれている地球に本当にそれだけの人間が住めるのだろうか。

イーロン・マスクは、「いずれ人類は地球以外の惑星で住まなくてはいけなくなる」との考えに至った。

地球以外の惑星、つまり火星に人類は移住すべきだと確信し、火星への飛行可能なロケット開発という遥かな、しかし現実的であると疑わないゴールに向かって挑んでいく。

大学生時代のイーロンはたびたび、「人類の将来にとって最も大きな影響を与える問題は一体何か」と考えていた。

そして、辿り着いた結論が、「インターネット、持続可能なエネルギー、宇宙開発の三つ」だった。

イーロンが普通の人と違うのは、この三つを実行に移していったことだ。

イーロンの卓越した能力の一つは、成功を単なる〝点〟ではなく、〝線〟で捉えることにある。

どれだけ高性能なEVカーを作ったとしても、必要な時に充電できなければ〝点〟で終わる。

〝線〟にするには充電ステーションの拡充がカギとなる。

今のペースで人間が増え続け、地球温暖化が進んで自然環境が破壊されれば、人類は地球上だけには住めなくなる。

だから、火星に移住する。

しかし、いま火星に行けるロケットはないから、それを作るまでの時間を稼ぐため、電気自動車と太陽光発電を普及させ、二酸化炭素や排気ガスがこれ以上増えないように歯止めをする。

そこでテスラ社を作り、地味だった電気自動車をカッコよく作り上げ世間の注目を集め、全米に高速充電ステーションを設置して長距離ドライブを当たり前にする。

充電ステーションの電気は、ソーラーシティー社が設置した太陽光発電パネルでセルフ供給を可能にする。

スペースX社は宇宙ロケットをコモディティ化して量産し、その上、ロケットの再利用を実現してコストを100分の1に下げ、火星に人類を送り込む。

どれもが、一つの国家でも手を焼くぐらい超ド級なスケールの事業であり、壮大過ぎて、一般人には理解しがたい。

イーロンの経営者としての秀逸さの一つは、目先の問題に全力を傾けつつも、将来に向かってのエネルギー配分もできることだ。

経済学者のピーター・ドラッカーは、リーダーの果たすべき役割は「直ちに必要とされているものと、遠い将来に必要とされるものを調和させていくこと」だと説いたが、その通りである。

この男、世界を変える本物の救世主なのか、それとも、21世紀最悪のほら吹きドン・キホーテか?

目が離せない。

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