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2019年8月24日 (土)

賢帝の世紀――ローマ人の物語Ⅸ/塩野七生

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 「パクス・ロマーナ」は、外敵の排除に成功するだけで達成できたのではない。帝国内部の紛争を収拾することにも成功していたからこそ、「ローマ人による世界秩序」に成りえたのである。


第9巻では、ローマ時代の「五賢帝」のうちトライアヌス、ハドリアヌス、アントニウス・ピウスの3人を取り上げている。

トライアヌスは、ローマ帝国初の属州出身の皇帝でありダキアとメソポタミアを併合して帝国の版図を最大にする。

ハドリアヌスは、トライアヌスが拡大した帝国内をくまなく巡察し統治システムの再構築をする。

ハドリアヌスの性格は、複雑だった。

厳格であるかと思えば愛想が良く、親切であるかと思うと気難しく、快楽に溺れるかと思えば禁欲に徹し、ケチかと思うと金離れが良く、不誠実であるかと思えばこのうえもない誠実さを示し、残酷に見えるほどに容赦しないときがあるかと思うと、一変して穏やかさに満ちた寛容性を発揮する、という具合だ。

要するに、一貫していないということでは一貫していたのが、ハドリアヌスの人に対する態度であった。

だが、この性格であったからこそ、真の意味でのリストラクチャリング、つまり再構築を、成し遂げることができた。

ダキアを征服することでドナウ河防衛線の強化に成功したトライアヌスと、帝国全域を視察することで帝国の再構築を行ったハドリアヌスが、「改革」を担った人であった。

この二人の後を継いだアントニヌスの責務は、「改革」ではなく、改革されたものの「定着」にあった。

そしてアントニウスは穏やかな人柄ながら見事に帝国を治め、帝国内の政治を充実させた。

本書では、当時のローマ人が「黄金の時代」と言った時代を生み出した皇帝たちの治世の手法をさまざまな側面から見事に描かれている。

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