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2019年8月18日 (日)

勝者の混迷──ローマ人の物語Ⅲ/塩野七生

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 いかなる強大国といえども、長期にわたって安泰でありつづけることはできない。国外には敵をもたなくなっても、国内に敵をもつようになる。外からの敵は寄せつけない頑健そのものの肉体でも、身体の内部の疾患に、肉体の成長に従いていけなかったがゆえの内臓疾患に、苦しまされることがあるのと似ている。──ハンニバル──

この第3巻では、これまでと打って変わりローマの「内政混乱」描いている。

国を挙げて団結し、国内の巧みな協力関係によりカルタゴの勝利したローマだったが、一旦敵がいなくなると、あるべき政治体制をめぐって、争いが起きるようになる。

大国への道のりの速さゆえに、ローマは内部から病み始める。

もともとローマは、執政官・元老院・市民集会の三権分立により民主政治を支えてきたが、この三者間のあるべき力関係をめぐって、指導者が変わるたびに揺れ動いた。

若き護民官グラッススは、権力が集中しすぎた元老院に対して改革をせまったが、結局殺されてしまう。

一方、スッラは、反対派を粛正してまで、元老院を質量ともに強化した。

しかしスッラの死とともに、彼が懸命に修復に努めた元老院主導による共和政ローマという「革袋」は、再びほころびはじめる。

それも、スッラの独裁下でも生きのびた、反スッラ派によってなされたのではない。

親スッラ派に属す人々によってなされたところが問題だ。

まさに本書のタイトルにあるように“勝者の混迷”である。

元老院への反発、反発を試みた政策立案者の暗殺、国勢改革、それに対する既得権階層の反発、……

いつの時代も起こることは一緒だ。

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