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2019年9月 4日 (水)

ドイツ人はなぜ、1年に150日休んでも仕事が回るのか/熊谷徹

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 ドイツの企業では、管理職も含めて、「余人を持って代え難い」、つまり「その人でなくては仕事がつとまらない」という状況は、ほとんどない。そのかわり、担当者が2週間会社に来なくても、他の社員がお客さんの問い合わせにすぐに対応できるように、書類や電子ファイルをわかりやすく整理しておくことが徹底されている。誰もが有給休暇を取れる会社を築くための第一歩は、書類を整理して、担当者以外の人が、必要な書類をすぐに見つけられる体制をとることだ。

ドイツ企業のほとんどのサラリーマンは、毎年約30日の有給休暇をほぼ100%消化し、1日10時間以上働かない。

午後6時には、たいていの企業のオフィスはがらんとしている。

日曜日と祝日の労働は、原則として禁じられている。

土曜日に働くサラリーマンも、めったにいない。

にもかかわらず労働生産性は日本より高い。

たとえばOECDのデータベースによると、ドイツの労働生産性は調査の対象になった35ヶ国内で9位だが、日本は21位とかなり低い。

なぜドイツの労働時間は短いのだろうか。その最大の理由は、政府が法律によって労働時間を厳しく規制し、違反がないかどうかについて監視していることだ。

企業で働く社員の労働時間は、1994年に施行された「労働時間法(ArbZG)」によって規制されている。

この法律によると、平日つまり月曜日から土曜日の1日あたりの労働時間は、8時間を超えてはならない。

1日あたりの最長労働時間は、10時間まで延長することができるが、その場合にも6ヶ月間の1日あたりの平均労働時間は、8時間を超えてはならない。

つまりドイツの企業では、1日あたり10時間を超える労働は、原則として禁止されているのだ。

ドイツ人は、「人々が全体の調和よりも、個人の利益を追求する社会で、最低限の秩序を守るためには、法律や規則で市民や企業の行動を律する必要がある」と考えているのだ。

また、残業時間が多い課の課長は、取締役や組合からにらまれる。

管理職は、自分の勤務評定が悪くなると、昇進に影響するので、なるべく社員に残業をさせないようにする。

さらにドイツの企業では、日本の企業よりもチーム精神が希薄なので、同僚が残業していても、自分の仕事が終わったらさっさと帰るのは常識だ。

「おれが仕事をしているのに、先に帰りやがって」というねたみの感情はない。

自分が与えられた仕事だけをやっていればいいのだ。

この背景には、ドイツの企業では、自分の仕事や責任の範囲が明確に決まっているという事情もある。

日本の企業のように、仕事の範囲があいまいということがない。

ドイツ人は、行方不明の書類を見つけるために時間を無駄にするのが大嫌いだ。

整理されていない状態、ごちゃごちゃした状態を、ドイツ語でChaos(混乱・混沌)と呼ぶが、この言葉には、日本語以上に「劣悪」というイメージが含まれている。

ドイツ人は、無駄な仕事をしたり、無駄な時間を費やしたりすることをひどく嫌う。

ドイツの大半のオフィスで書類がすぐに見つかるように整理されている理由の1つは、彼らが書類を捜すために時間を無駄に費やしたくないと考えているからだ。

ドイツ人は、仕事をする時に「費用対効果」の関係を常に考えている。

費やす時間や労力に比べて、得られる効果や利益が少ないと思われる場合には、仕事を始める前に、「そのような仕事をする意味があるのか」と真剣に議論する。

したがって管理職にとっては、これから行おうとする仕事や課題がなぜ彼、または彼女のチームにとって重要なのかについて、社員を説得できるかどうかが、重要な鍵となる。

ドイツ人は、日本人と違って、「がんばっている」というだけでは全く評価しない。

過程よりも結果を重視するのだ。

がんばっているのに成果が出ない社員よりも、あまりがんばらなくても、短い時間で成果を上げる社員のほうが評価される。

「がんばり」を評価するのは、日本独特のメンタリティだ。

ドイツ企業の絶対的な成果主義と、社員と企業の間の緊張関係、さらにドイツ人の生真面目な国民性が、労働者保護の仕組みの悪用を生まず、生産性の向上につながっていると言える。

ドイツ語でUrlaubと呼ばれる休暇は、人々のメンタリティや人生観を理解する上で、最も重要な言葉の1つである。

ドイツ人は、他者のために行う労働の時間と、自分のために使う時間を厳密に区別する。

そして、企業などが自由時間を侵すことを断固拒否し、自由時間の確保を重要視する。

そんなこんなでドイツ人と日本人とでは働き方がずいぶん違う。

すべてをマネする必要はなく、ドイツ人の働き方にも問題があるのだが、働き方改革が叫ばれている今、参考になることは多いのではないだろうか。

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