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2019年10月12日 (土)

暴走するネット広告/NHK取材班

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 取材班が目の当たりにしたのは、ネット広告の急速な拡大を支える「アドテクノロジー」と呼ばれる技術の進化の裏で行われていた「儲かるならば何をやってもいい」とも言えるようなモラルを踏み外した不正、「利益が上がっているから」と不正を見て見ぬ振りをする関係者たちの無責任な態度の広がり、そして制御不可能なほど複雑に絡み合ったネット広告の流通システムだった。


本書を読んでみて、まさにネット広告の暴走が始まっているという印象を持った。

現在、主流となっている「運用型」広告を支えているのが「アドネットワーク」と呼ばれる仕組みだ。

ネット上に数多存在する広告枠を持つウェブサイトを束ねたネットワークを指す。

このネットワークを使うことで、配信事業者は、広告主から依頼された広告を多くのメディアに一括して配信・掲載することができる。

多くの配信事業者のアドネットワーク同士がつながることで、それぞれの配信事業者の間で配信先を融通し合うことができ、広告主にとってもより多くのサイトに広告が掲載されるチャンスが増えることになる。

そして、このアドネットワーク内の取引では、「広告主が出したい広告」と「掲載可能な広告の枠」がコンピューター上で自動的にマッチングされる仕組みになっている。

言ってみれば、究極の「自動入札システム」が成り立っているのだ。

ネット広告は、このアドネットワークのシステムを活用した「運用型」が圧倒的に多く、国内ではネット広告全体のおよそ8割を占めているという。

そして、ここにネット広告の暴走が起こる余地が生まれている。

広告主や配信事業者が、広告の配信・掲載先のウェブサイトの質を管理しきれないという事態が発生してしまう。

広告主のチェックの目が行き届かないことが、ネット広告の暴走を許す一因となっているのだ。

ネットメディアの多くは、ページ内に掲載されているネット広告から収益を上げる構造になっている。

アクセス数が多くなるほど、入ってくる広告料も増えるので、運営者はアクセスを集めるため、より多くの人の関心を集めるテーマ・内容の記事を書く。

ところが、粗悪なネットメディアやまとめサイトは、十分なチェック機能を備えておらず、真偽不明、もしくは誤った情報が掲載されることもある。

そして、悪意のあるフェイクニュースが掲載されることもある。

その結果、個人が誹謗中傷される人権侵害やネットリンチのような状況も起きている。

「見られたら儲かる」というネット広告の、いわば当たり前の仕組み自体を問い直す時期に来ているのかもしれない。

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