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2019年10月21日 (月)

私たちは子どもに何ができるのか/ポール・タフ

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 レジリエンス、好奇心、学業への粘りといった高次の非認知能力は、まず土台となる実行機能、つまり自己認識能力や人間関係をつくる能力などが発達していないと身につけるのがむずかしい。こうした能力も、人生の最初期に築かれるはずの安定したアタッチメントや、ストレスを管理する能力、自制心といった基幹の上に成り立つ。

非認知能力とは、ひとつのことに粘り強く取り組む力や、内発的に物事に取り組もうとする意欲などを指す。

心のOSと言っても良いかもしれない。 

非認知能力については、ノーベル経済学賞受賞のヘックマンが研究した「ペリープロジェクト」が有名だ。

それによると、就学前に良質な保育・教育を受けた子どもは、成人後に高校卒業率が高く、犯罪率が低く、生活保護率が低く、年収が高かった。

つまり、子どもの期間、特に就学前に適切な環境と関わりを持つことは、子どもたちの非認知能力の育成、ひいてはその後の人生にも決定的に重要な意味を持つということだ。 

非認知能力は子供をとりまく環境の産物である。

子供たちのやり抜く力やレジリエンスや自制心を高めたいと思うなら、最初に働きかけるべき場所は、子供自身ではない。

環境なのである。

研究者らの結論によれば、環境による影響のなかで子供の発達を最も左右するのは、ストレスなのだという。

子供たちは、いくつかの環境要因によって、長期にわたり不健全な圧迫を受けつづけることがある。

こうしたストレス要因が子供の心と体の健全な発達を阻害する度合いは、従来の一般的な認識よりもはるかに大きい。

いちばんの問題となる環境要因は、居住する建物ではなく、子供たちが経験する人間関係なのだ。

つまり、周りの大人が、とくに子供たちがストレスを受けているときにどう対応するかである。

子供が感情面、精神面、認知面で発達するための最初にしてきわめて重要な環境は、家である。

もっとはっきりいえば、家族だ。

ごく幼いころから、子供は親の反応によって世界を理解しようとする。

研究によれば、とくに子供が動揺しているときに、親が厳しい反応を示したり予測のつかない行動を取ったりすると、のちのち子供は強い感情をうまく処理することや、緊張度の高い状況に効果的に対応することができなくなる。

反対に、子供が瞬間的なストレスに対処するのを助け、怯えたり癇癪を起こしたりしたあとにおちつきを取り戻すのを手伝うことのできる親は、その後の子供のストレス対処能力に大いにプラスの影響を与える。

非認知能力が低いのは、就学前の家庭環境にあるということが、この問題を深刻化している。

基本的に家庭の問題には行政側も中々立ち入れないからだ。

逆境にある子供たちを手助けして困難な環境を乗りこえさせるのはむずかしい。

たいていはひどく骨の折れる仕事を伴う。

しかしそれが個々の子供や家族の暮らしのなかだけでなく、私たちのコミュニティ、ひいては国全体に莫大な変化を生むことは、研究結果から明らかだ。

研究者たちがしてきたように、もっとうまくできるはずだと、まずはしっかり認識すること。

それが最初のステップだといえるのではないだろうか。

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