働き方の損益分岐点/木暮太一
企業が利益を増やす方法は、「売上を増やす」か「費用を減らす」かのどちらかです。それと同じように、個人が「自己内利益」を増やす方法は、「満足感(売上)を増やす」か「必要経費(費用)を減らす」かのどちらかしかありません。
現在、働き方改革が叫ばれている。
しかし、多くは単に残業時間の削減であったりである。
中には、残業時間が減ることによって、収入が減ったというサラリーマンもいる。
働き方を変えるということは、働く時間の問題だけではない。
どうやったら利益を増やすことができるか、ということである。
個人においても「利益が大事」であり、そのためには「売上を増やす」か「費用を減らす」しか手がない。
高い年収や昇進を求めて仕事をしても、最終的にこの「自己内利益」がプラスにならなければ、意味がない。
個人が目指すべきは、この「自己内利益」を増やしていく働き方だ。
「100万円が欲しいですか?」と聞かれたら、ほとんどの人が「YES」と答えるだろう。
しかし、「100万円をあげるから、その代わりに1年間、奴隷になってください」と言われたら、どうだろう?
当然、答えは「NO」だ。
では、どうすれば社会のなかでちゃんと働きながら、「自己内利益」を高めていけるのか?
それには2つの方法がある。
一つは、満足感を変えずに、必要経費を下げる方法。
もう一つは、必要経費を変えずに、満足感を上げる方法、である。
もし自分だけが世間相場よりも必要経費を下げることができれば、その分、「自己内利益」を増やすことができるの。
ただ、働くうえでのこの必要経費というのは、単なるお金の話とは限らない。
働く時間でもない。
重要なのは「精神的コスト」、つまり「ストレス」
そんなに短い時間であっても、ストレスの強い働き方は、高い必要経費を払っているのと同じ。
逆に長い時間働いても、それが楽しい時間であれば、必要経費は低い。
「楽しい仕事」というのは、「興味を持てる仕事」のこと。
そして、「仕事を楽しもう」というのは、「仕事に興味を持とう」ということ。
どんな仕事も、それ自体は楽しくもつまらなくもない。
ただのお金を稼ぐ手段にすぎない。
それを楽しいと感じるか、つまらないと感じるかは、意識や気持ちによる。
「楽しい仕事」の意味を勘違いしてしまうと、いつまで経っても、その「楽しい仕事」に就くことはできない。
「世間相場よりストレスを感じない仕事」を選べるかどうかは、気持ち次第といえる。
これからの時代、わたしたちはコストを下げる働き方を取り入れなければいけない。
要は精神的なコストをできるだけ抑える働き方をしなければいけないということである。
次に、「満足感を上げる方法」についてだが、
それには自分がこれまで築いてきた「土台」を活用して仕事をするということである。
「働き方を変える」とは、これまでとはまったく別の能力を身につけて別の仕事に就くということではない。
何か新しく資格を取る必要はないし、新しい業界に飛び込んで新入社員と机を並べて仕事をするということでもない。
これまで自分が経験し、蓄えた知識とノウハウを他で活用する働き方をするということ。
私たちがこれから身につけなければいけないのは、技術や知識ではない。
それはもう十分持っている。
新しく取り入れるべきは、「編集力」。
編集力とは、自分が持っているものを「相手が欲しいもの」に変える力。
わたしたちはたくさん「素材」を持っている。
それをいかにその場に応じて相手が欲しいものに変えていけるか?
それが問われる時代だということだ。
企業を見る前に、まず自分自身の働き方を見直す必要がある。
「自己内利益」を考える自分の「労働力の価値」を積み上げていく。
精神的な苦痛が小さい仕事や仕事の仕方を選ぶ。
これが、この本書で著者が主張していること。
確かに、現在の働き方改革は、企業側から見た〝働かせ方改革〟になっているかもしれない。
残業を削減しろ、でも成果は維持しろ、だからとにかく生産性を上げろ。
これでは働く人は豊かになれない。
本当の意味での働き方改革とは何なのか?
改めて考えさせられた。
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