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2019年11月 1日 (金)

記者たちは海に向かった/門田隆将

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 熊田が死んで、俺が生き残った──。
 熊田記者の「死」は、生き残った記者たちに哀しみと傷痕を残した。それは、「命」というものを深く考えさせ、その意味を問い直す重い課題をそれぞれに突きつけた。

2011年3月11日、一人の若者が死んだ。

死者・行方不明者2万人近くを出した東日本大震災の犠牲者の中の「一人」である。

だが、この若者には、ほかの犠牲者とは異なる点がひとつだけあった。

それは、彼の死が「取材中」にもたらされたということである。

彼は新聞記者として、大地震と大津波の取材の最前線にいた若者だった。

人々を吞み込んだ大津波の中で、熊田記者は自分の命と引き換えに地元の人間の命を救った。

記者とは「記録者」である。

それを考えれば、人を助けようとして自分が死んでしまえば、記録者にはなれない。

しかし、一方で一人の人間である。

新聞記者は、半分は人間であり、半分は記者である。

熊田が人間として純粋に、人を助けた。

2013年、福島民友新聞は、「熊田賞」を設けることを決めた。

最後まで仕事と向き合った熊田由貴生という人間がいたことを忘れないためである。

2011年3月11日、その時、記者たちは海に向かった。

ある者は命を落とし、そして、ある者は生き残った。

明暗分かれた男たちには、負い目とトラウマが残った。

しかし、そこには、石にかじりついても「真実」を報道しよう、そして「時代」を切り取ろうとする記者たちの執念と責任感が確かにあった。

あの未曾有の悲劇の中で、走り続けた記者たちの姿は、後世の人々の勇気に必ず繫がると思う。

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