戦力「内」通告/ダン・ラスト
人をうまく読めなければ、ぐらぐらと揺れる不安定なキャリアの階段をのぼることになる。それも目隠しをしたまま。
職場には、少数ではあるものの、キャリアをステップアップさせ、より責任の大きな、給与の高い職にありつける者たちがいる。
その者たちが何をしているのか、本書は紹介している。
彼らは、まず、今後のキャリアに絶大な影響力を持つ人々(上司、同僚、部下)からなる中核グループを特定する。
そして、ミーティング、電話会議、プレゼン、会社の社交行事など、中核グループの人々を第三者として観察できる機会を有効に利用する。
中核グループの人々の勤務中のボディランゲージ、表情、会議中の典型的な振る舞いなどを思慮深く観察し、ベースラインを見きわめる。
ベースラインから逸脱した行為に目を光らせる。
人を読むには何が必要だろうか。
人間は複雑な生き物であり、その人の持つ動機、恐怖、欲望、欲求、ものの見方、癖、態度を見きわめるのは途方もない難事だ。
誰かを完璧に読むことなど不可能なように思える。
だからこそ、私たちは人間の行動の水面下で起きていることを漫然と見過ごしてしまう。
職場の人々のモチベーションや行動傾向について深く洞察するには、自分自身の感情的反応を最小限に抑え、先入観、偏見、期待を捨てなければならない。
人を読み、自らの感情的・批判的反応を最小限に抑えるにはどうすればいいだろうか?
最善の方法のひとつは、人と直接関わるのではなく、第三者となって観察することだ。
ベースラインを見きわめるにあたってお勧めの方法は、さまざまな状況でその人を観察することだ。
ミーティング中、プレゼン中、議論の最中など、いろいろな状況で、その人がどんなふうにコミュニケーションを図り、どんな服を着ていて、どんなふうに他者と交流するか、基本的な声の調子や態度はどんなものかを観察する。
職場のキーパーソン全員のベースラインがわかってくれば、ベースラインからの逸脱を目ざとく発見できるようになる。
職場のキーパーソンの考えが分かってくれば、職場でどうふるまえばよいのかがわかってくる。
職場には友も敵もいない。
いるのは、ただ自分の仕事をうまくやろうとしている不完全な人間だけだ、と著者はいう。
そして、これが職場で、戦力「内」通告を受ける方法だという。
アメリカ人が、職場で生き残り、勝ち組になるために、ある意味露骨な、そして途方もない努力をしているということがよくわかる本である。
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