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2020年1月23日 (木)

海の歴史/ジャック・アタリ

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 世界は今でも海そして海底で起きることに大きく依存する。国家のサバイバルに必要なものは、今後も海を通じて運ばれてくる。紛争が起きてから最初の戦いの場になるのは、これまでと同じく海だ。それは敵の天然資源の供給路を断つためであり、敵の来襲を阻止するためである。テロ組織は、経済的、地政学的な権力が実際にはどこに宿るのかを察知し、その脆弱性に気づくかもしれない。用心しないと、彼らは海を攻撃対象にする。したがって、領土防衛の争点は、遠くの海と深海までを含む、海上および海底なのだ。

地球の71%は海である。

海には多くの生物種が生息している。

海は私たちの暮らしに必要不可欠なのだ。

海は太古より、収穫、冒険、発見、貿易、富、権力だけの場だったのではない。

第一に海は、文化の主要な源泉だった。

海は、自由という重要なイデオロギーの源泉なのだ。

私たちは海から、広大さ、陶酔、悲劇を学ぶ。

海は歴史的に女性よりも男性の王国だった。

だからこそ、女性よりも先に男性が自由を追い求めた。

過去では、女性はほとんど航海しなかった。

女性が乗客以外の立場として船上にいることは稀だった。

だが今日、洋上での女性の存在感は増している。

これは男女全員の自由の発展度を計測する優れた物差しといえる。

人類がノマドだったころ、海はノマディズムの究極の場だった。

海上におけるリスクは、不毛の砂漠よりもはるかに高かった。

海ではちょっとした事故や些細なミスであっても死につながるからだ。

また、海は砂漠よりも、冒険、大胆さ、選択、自由の場だ。

海は砂漠とは異なり、権力が跋扈する場でもある。

だからこそ、海を理解する素養があれば、サバイバルや成功が保証され、倫理や生命に対する理解が深まり、大局観を築き上げることができる。

航海する人はもちろん、海と接する人、あるいは海とともに生きる人は、こうした素養を培うことができる。

そのような人々が世界を支配する。

そして勝者のイデオロギーが形成されるのも海上なのである。

今日、近代的な倫理観が明確に築き上げられるのも海上だ。

海によって育まれるそうした価値観は、人類史においてすべての価値観のなかで最も重要である。

この価値観は現存するすべての文明を形づくっている。

すなわち、それは自由になりたいという欲望である。

海は、嵐、海難事故、海賊、海戦など、数多くの不幸が生じた場だ。

さらには、港は、伝染病がもち込まれ、悪い知らせが届き、敵の来襲があった場だ。

海は、人類にとっての多くの重要な発見とイノベーションがあった場でもある。

文明は熱意をもって海と向き合うほど活力を増す。

海から見た歴史を語ることが海の歴史である。

海が死ねば歴史も終わる。

海が死んでも生命が消え去ることはないが、人類は消滅するだろう。

本書を読んで、海は生きとし生けるすべてのものの源だと知らされた。

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