洗脳/Toshl
周囲にいた男性に加え、数人の女性が僕を取り囲み、ヒステリックな叫び声と背中への強打が始まる。
「いいかげんにしろ、このエゴ人間!」
「ぎらぎらした気持ちわりー劣等男!」
それはまぎれもない守谷の狂気の叫び声だった。
「おまえはそのエゴ人間の中でも最低最悪のうじ虫男なんだよ!」
罵倒、罵声、悲鳴が入りまじり、泣き叫んでいる自分も頭が真っ白になり、夢なのか現実なのかもわからなくなっていく。時間の感覚もとうになくなり気が遠くなっていった。
本書はX JAPANのヴォーカルTOSHIの12年に及んだ「洗脳」の恐ろしさを心の奥底から訴えた、自伝的告発の書でわる。
彼の周りで次々に起こるトラブルの数々。
苦悩の日々。
心の隙間に忍び寄ったのは、「洗脳」という思いもよらぬ地獄だった。
妻を通して洗脳集団ホームオブハートが巧妙に勧誘してくる。
精神世界、スピリチュアル、宇宙の話。
だんだん精神世界やヒーリングミュージックなどに傾倒していく。
そして訪れたのは「洗脳」という、人間としての意志も、考えも、自由も、すべてを奪われてしまう恐ろしい地獄のような日々。
執拗な暴力と罵倒、搾取。
残忍な手口。
そして、そこからの脱出。
「洗脳」というものがいかに恐ろしいものであるか、本書はそのことを教えてくれる。
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