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2020年2月21日 (金)

小林陽太郎「性善説」の経営者/樺島弘文

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「富士ゼロックスがなくなっても、『モーレツからビューティフルへ』は残りますよ」
 この小林の言葉を、藤岡は今でも鮮明に覚えている。企業だから栄枯盛衰はあるかも知れない、けれども「ビューティフルキャンペーン」のことは人々の記憶から消えないということだ

本書は富士ゼロックスを急成長させた小林陽太郎という名経営者について書かれている。

富士ゼロックスで思い出すのは、1970年に取締役だった小林氏が主導して行った「モーレツからビューティフルへ」というビューティフルキャンペーンだ。

長身長髪でヒッピー風の若者が、銀座の目抜き通りを「BEAUTIFUL」と手書きした紙のプラカードを胸の前に掲げて、ただ歩いていく。

最後に「モーレツからビューティフルへ」という14文字が、画面に映し出される。

この一風変わったテレビCMが流れたのは、1970年4月のこと。

若者は、ザ・フォーク・クルセダーズで人気のあった加藤和彦。

30秒間の映像は、歩いていく加藤をワイドレンズで長回ししながら撮ったもので、見ている者に不思議な臨場感を感じさせた。

提供したのは、富士ゼロックス。

これが大きな社会的反響を呼ぶことになった「ビューティフルキャンペーン」の第一陣である。

このCMは社会に大きなインパクトを与えた。

なかでも、若者からの反響は想像を超え、富士ゼロックスを一躍人気企業へと押し上げた。

「ビューティフルキャンペーン」は、経済至上主義で突っ走る日本人に対して、もっと自分の生き方、働き方を見直しましょうと訴えたものだ。

ただ仕事に没頭するだけでいいんでしょうか、ゆとりとか余裕を持って人生のあり方を考えてはどうですか、というメッセージである。

それまで世の中を覆っていた「モーレツ」という価値観ではなく、人間らしい生き方をするために「ビューティフル」という新たな価値観を提案したものだった。

《富士ゼロックスは、社内外の信頼を基盤とし、たゆまざる努力と革新によって、卓越した価値を提供し、人間社会の理解と調和の増進に寄与する。》

このあまりに有名なCMは、小林氏が主導して作ったこの企業理念に基づくものだ。

企業は社会にどんな価値を提供するのか?

それを考え抜き実践したのが小林氏である。

名経営者といわれる所以であろう。

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