« 50歳すぎたら、「まあ、いいか」「それがどうした」「人それぞれ」でいこう/弘兼憲史 | トップページ | 米軍が恐れた「卑怯な日本軍」/一ノ瀬俊也 »

2020年2月10日 (月)

神話で読みとく古代日本/松本直樹

Photo_20200205080201

 神話とは本来、人の生死までをも決定づけ、また社会に対する規制力を持って信仰・伝承され、村落共同体を形成・維持していたのである。だから、神話という型を借りることで、その「神話力」を頼りにして、王権国家の由来と正当性を説く。これこそが、古事記や日本書紀が〈歴史〉の冒頭に神代を置いた理由ではないだろうか。

本書によると、古事記・日本書紀の〈神話〉は、天皇を中心とした大和王権の由来と正当性を説くために作られたものだという。

だからその結論は、「アマテラスの子孫である皇祖が国を支配する」ということなのであって、それを受けて、神武以下の歴代天皇が天下を統治してゆくわけである。

新しい〈神話〉は決して自由に作ることができない。

作ってもそれは神話としての説得力を持つことはないのだから。

だから既存の神話に拘束され、その代償として「神話力」を維持し、そこに自らの主張をそおっと乗せて作られてゆく。

大和王権は、地方の神や神話を取り込み、利用しながら、王権国家の由来を説く〈建国神話〉を作り上げ、偽の共同体としての国家の上に君臨させた。

「日本」が出来るずっと以前に、この列島の上に、それぞれの神話を頂いた数多くの村落共同体があった。

神話は昔話とは違って、人の生死や、共同体の掟などを規定する「神話力」を持って、共同体の中で口承されていた。

まずは、近隣の共同体同士が集まって小さな国が作られていった。

たとえば、稲作の開始によって多量の水が必要になった時、川の水利権をめぐって、流域の共同体同士が交渉し、あるいは競争し、それが小さな国が出来る一つの契機になった。

小さな国には、共通の掟が必要であったに違いなく、そのために以前の神話は取捨選択、あるいは改変されていったに違いない。

その後、いくつもの段階を経て、大和王権が「日本」という名の国家を形成することになるが、その際にも神話は重要な役割を果たしていたらしい。

このような歴史的背景を持って古事記・日本書紀は作られた。

新しい権力が新しい国家の実現を目指す時、まずは過去の〈歴史〉の上に、自らの存在を正当化することが必要なのだ。

古事記と日本書紀は、新しい天武王権による、新しい国家作りの正当性を国内外に示すために作られた〈歴史〉であると考えてよいだろう。

その〈歴史〉を〈神話〉時代から説き起こしたところに日本国史の特徴がある。

本書を読んで〈神話〉の持つ意味について改めて考えさせられた。

« 50歳すぎたら、「まあ、いいか」「それがどうした」「人それぞれ」でいこう/弘兼憲史 | トップページ | 米軍が恐れた「卑怯な日本軍」/一ノ瀬俊也 »

書籍・雑誌」カテゴリの記事