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2020年3月10日 (火)

マネーロンダリング入門/橘玲

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 マネーロンダリングの王様は、昔も今も現金のハンドキャリーである。高度情報化社会に意外に思うかもしれないが、これは不思議でもなんでもない。SWIFTの例にあるように、コンピュータを利用した資金のやり取りは、データさえ手に入れば送金経路を簡単に追跡できる。技術が進歩すればするほど、匿名性を保証された現金の価値は高まるのだ。

マネーロンダリング、日本語に訳せば資金洗浄。

タックスヘイヴンやオフショアと呼ばれる国や地域に存在する複数の金融機関を利用するなどして、違法な手段で得た収益を隠匿する行為。

麻薬・武器密売・人身売買など「人道にもとる」犯罪にかかわる資金が「マネロン」の主な対象となる。

法的には脱税資金の隠匿はマネーロンダリングに含まれないが、広義には所得隠しなど裏金にかかわる取引を総称することもある。

そしてマネーロンダリングの主役は昔も今もスイスの金融機関だ。

スイス系の金融機関が、競争の激しい富裕層ビジネスのなかでこれまで優位を保つことができた理由は、その守秘性にある。

スイスの金融機関の守秘性の象徴が1934年に制定された「スイス銀行法」だ。

同法で「その職務もしくは職責上知りえた秘密を漏らした者、あるいは秘密を漏らすよう他人に教唆した者」に対し、懲役刑を含む刑事罰を科すと定めた。

この条文には例外規定がないため、スイスの金融機関はどのような場合でも第三者に顧客情報を開示する必要がなかった。

こうした過度の守秘性はスイスの金融業を発展させる原動力となる一方、国際麻薬組織の資金洗浄に使われるなど犯罪の温床ともなり、60年代から70年代にかけてさまざまなスキャンダルを引き起こすことになった。

スイスがEUに加盟しないのは、租税情報を他国と交換するようになれば金融立国としての基盤が崩壊することをよく知っているからである。

そして驚くことにスイスには電子マネーが一般化した今の時代でもお金は現金で持ち込まれる。

スイスには現金や有価証券の持ち込み制限はいっさいない。

積荷に堂々と「CASH」と記載しても税関職員から何一つ質問されない。

こうしてスイスには、今日も世界中から莫大な額の現金が運び込まれている。

そういえばスイスに現金を持ち込むシーンが映画には何度も登場する。

「あぁ、あれはそういう意味だったんだ」と妙に腹落ちした。

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