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2020年5月10日 (日)

カエルの楽園/百田尚樹

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「三戒のために、ナパージュのカエルたちの命が危うくなってもですか? 三戒のせいで国が危うくなっても、三戒を守るのですか?」
「それは詭弁だ!」ガルディアンは叫ぶように言いました。「そんなごまかしの言葉で三戒の矛盾を衝こうとしても、わしは騙されんぞ。ナパージュが今日まで平和でいられたのは、三戒のお蔭なのだ。三戒を失えば、ナパージュの平和もなくなる」 

本書は寓話の形をとりながら、現在の日本を皮肉っている。

楽園のナパージュは日本国であり、その住人のツチガエルは私たち日本人だ。

ナパージュの綴りは「Napaj」、ひっくり返すと「Japan」になる。

狂言回しである二匹のアマガエルは難民。

物語はアマガエルの目を通して語られる、ナパージュとツチガエルたちの運命だ。

ナパージュを脅かすウシガエルは中国、ナパージュに君臨する鷲のスチームボートはアメリカ合衆国、ハンニバル三兄弟は陸海空の自衛隊だろうか。

ツチガエルたちが何よりも大切に守っている「三戒」は、日本国憲法の前文」諸国民の公正と信義に信頼して云々──」と9条2項。

彼らがいつも歌っている「謝りソング」は、戦後の自虐思想そのものだ。

「三戒」と「謝りソング」のせいで、ツチガエルたちは他力本願の無責任主義と夢見る平和主義に陥っている。

平和でありさえすれば、紛争や戦争さえなければ、奴隷の平和であってもよいと心から思い込んでいる。

しかし、この寓話の最後にはナパージュはウシガエルに攻め込まれ、虐殺され、支配されてしまう。

何より怖ろしいのは、この寓話が、現在、私たちの目の前で、少しずつ現実になりつつあることだ。

「カエルの楽園」はまさに現代の日本である。

いつまでこの矛盾した状態を放置しておくのだろう。

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