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2020年5月23日 (土)

児玉誉士夫 巨魁の昭和史/有馬哲夫

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 五六年のこの時点で、児玉は現総理大臣と次期総理大臣候補者を自分の影響下に置いていた。なおかつ、彼はやくざや右翼団体など裏社会をも支配していた。表と裏の社会の両方を総合的にプロデュースしている。こんな人間がかつて日本の歴史にいただろうか。

児玉誉士夫の名前を初めて知ったのは、あのロッキード事件である。

しかし、そもそも児玉は表舞台に現れることのない人物である。

児玉の肩書は、日本の右翼運動家、自称CIAエージェント、暴力団・錦政会等々、様々。

一方、「政財界の黒幕」、「フィクサー」とも呼ばれた。

児玉は戦争中、海軍航空本部のために物資調達を行い、終戦時までに蓄えた物資を占領期に売りさばいて莫大な利益を得る。

この豊富な資金を使って、戦後分裂状態にあった右翼を糾合し、鳩山一郎など大物政治家に政治資金を提供した。

しかし、児玉が生きているうちに「自主防衛」が実現することはなかった。

アメリカ駐留軍は日本の敗戦以来、ずっと日本に居すわっている。

これまでの戦後の指導的な政治家と児玉はこの状態を変えようとしてきた。

もっとも長く、熱心にこの課題に取り組んできたのは案外、児玉だったのかもしれない。

振り返ってみると、児玉の人生の絶頂は、自分が苦労して「培養した」鳩山一郎が総理大臣になり、衆参両議院本会議で「自主防衛論」演説をしたときではなかっただろうか。

ところが、その後鳩山は「自主防衛論」を置き去りにして、ソ連との国交回復に突き進んだ。

今日では、「自主防衛」どころか防衛そのものの劣化が進んでいる。

東北の没落士族の家に生まれ、惨めな少年時代を過ごした児玉は、その後それまでは想像もできなかった軍や政治の大物とめぐり合い、昭和の政治をプロデュースする大物に成長していった。

GHQ、国務省、CIAとわたり合い、裏方とはいえ一つの時代を動かしてきた。

本書に書かれているのは、教科書には決して載ることのない裏の歴史である。

それだけに、非常に興味深い。

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