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2020年5月13日 (水)

カネと非情の法律講座/青木雄二

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 和解で債権が回収できる確立は、裁判をつづけるよりもよほど高い。

裁判がはじまっても、判決にまでいたるのはきわめて例外的だと著者はいう。

とりわけ民事訴訟はそうした傾向が強い。

では判決以外にはどんな形で裁判が決着するか。

もっとも早い段階で終わってしまうのが示談である。

示談についで早い時期に解決するのが、原告側の訴訟取り下げにより決着するパターンだが、現実にはこれも多いとはいえない。

もっとも一般的なのは、和解によって解決するケースである。

和解で決着することが多い理由は、和解には当事者はもちろん、弁護士、裁判官とすべての関係者に多くのメリットがあるからだ。

まず裁判所側からいえば、もっとも大きな利点は事件が短期間で解決することである。

わが国はいまたいへんな訴訟ラッシュで、どこの裁判所もパンク寸前の状態にある。

大都市の裁判所は三人一組でチームを編成して仕事を進めるのだが、現在一つのチームが七百から八百件もの事件をつねに抱えているといわれている裁判所もある。

しかもかれらにも査定があり、その年度に担当した事件のうち何件が解決したかが最高裁に逐一報告されている。

このため、とにかく事件が解決することがかれらにとって最大級の関心事なのだ。

裁判所にとってもっとも早い解決は原告に訴訟を取り下げてもらうことだが、これは原告が納得しないため、かなり確率が低くなる。

現実的に最短での解決は和解となるわけだ。

裁判官にとって和解の二番目のメリットは、仕事がたいへんラクなことである。

和解なら裁判官は判決文を書く必要がない。

判決を書くためには当事者の主張を正確に把握しなければならないし、当事者が提出した証拠もすべて理解しなければならないのだが、これらの書類だけでも机の上に積み重ねると20センチくらいにはなってしまう。

判決を書くためには、これらすべての書類に目を通し、当事者の主張を整理、理解しなければならない。

これに対し、和解なら当事者さえ納得すればよいから、わざわざ20センチの調書と速記録を読む必要がない。

つまり裁判所としては「判決文を書く必要がない」「時間が早い」「資料をこまかく読まなくてもよい」というのが和解のメリットなのである。

いっぽう当事者にとっての利益はどこにあるのか。

これは弁護士にとっての利益とも重複するのだが、最終的に債権を回収できる可能性が高いということにある。

現在のような無力な強制執行システムでは、裁判を最後までつづけて判決を取り強制執行したとしても、結果的に残ったのは判決文一枚ということも考えられる。

これにくらべて和解は、形だけは両者の納得の上の決定なので、少なくとも強制執行よりもカネが返ってくるとみてまちがいない。

弁護士も回収の依頼にいったときは「私にまかせなさい。かならず全額取り立ててみせますから」と言って受けておきながら、いざ交渉が始まると「和解するほうがトクですよ」と一転して和解をすすめだす。

ここが弁護士のウデの見せ所なのだが、じつにたくみに依頼人を納得させてしまう。

だから、日本の裁判では和解が圧倒的に多いというわけだ。

このことは一般人も知っておいたほうがよいだろう。

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