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2020年6月11日 (木)

不況もまた良し/津本陽

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「ある町が水害で、すべてを流失した。隣町は何の被害もなかった。
 十年後、被害を受けた町は例外なくすべて発展している。火事で全部燃えてしまった町も同様である。これも全部発展している。
 災害を受けなかった町は、発展しない。恵まれたと思ったところは、実は恵まれていない。悲惨な状態につきおとされた町が、十年後には数倍の発展をする。
 これは何が原因であるか。
 私は心の問題であると思う。これは復興しなければならないという、人々の心の働きによって変わってくる。
 悲惨な被害が、その後の発展の起因となる。私のいままでの体験からいえば、不景気に直面しては発展し、何か事故が起こっては発展してきた。
 大きな災害が起これば『ああ困った』と動転するのが人情である。だが翌日になると、考え直す。
 あわてるな、待て待て。ああいうことをやっていても解決しない。この際このように立て直そう」

松下幸之助は、何の後楯もない町工場の主人から、すさまじい生存闘争をくりかえしてきた。

一度も負けられない。

負ければ首が飛ぶ、戦国大名と同様の勝負の修羅場を生きのびた人である。

彼は内心の闘争心を裏書きする含蓄に富んだ、上記の発言をしている。

まさに幾多の困難を乗り越えてきた経営者だからこそ言える言葉だ。

幸之助には、いわゆる学問というものはない。

幸之助はいっている。

「僕は誰からも学問を教えてもろうてないから、考えかたが、型にはまってない。庶民のなかで育ったんで、世の中を広く見てこられた。学問で、塩が辛いもんやと習うても、海へ入って泳いでみんことには分からん。僕は学問抜きで海へ放りこまれて、無我夢中で泳いで泳ぎを覚えたので、松下流の水泳ができた。何々流の水泳を教えてもろうたら、なんぼ上手になっても何々流になるだけでんな」 

なんとも含蓄に富んだ言葉ではないだろうか。

学問がないからこそ世の中で起こることの本質をつかむことができたというのである。

本書ではそんな含蓄に富んだ言葉がいくつも出てくる。

もし幸之助が今のコロナ禍の世界で生きていたら、どんな発言をしたのだろう。

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