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2020年6月25日 (木)

皮膚という「脳」/山口創

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 ここで重要なのは、皮膚自身が脳からの情報処理を必要とせずに、自ら知覚し、判断していることだ。さらには「気配」や「雰囲気」、「直観」といった現在の科学では解明されていない現象までも皮膚は捉えている可能性さえある。このように考えると、視覚や聴覚などあらゆる感覚は、皮膚から始まったといってもいいかもしれない。

本書では、皮膚のさまざまな機能や、皮膚についての新しい発見を紹介している。

特に「露出した脳」としての視点から、「脳」にも匹敵する皮膚の驚くべき可能性について提示している。

さらには専門の心理学の立場から、自己の境界としての皮膚の役割について考えている。

地球上、脳がない生物は無数といるが、皮膚がない生物はいない。

生物の種類としてはむしろ、脳がない生物の方がはるかに多い。

実は、脳がないと何もできないなんてことはない。

脳がない生物は、人間よりもはるかに長い年月を生き延びてきている。

皮膚はこれまで、外界からの刺激から身体を守る「被膜」という程度にしか考えられていなかった。

確かに、皮製品のコートや鞄などはやわらかいが丈夫で、使い込むほど身体に馴染んでくる。

しかし、皮膚はそれだけのものだ、という程度に考えていたとしたら、大間違いである。

生きている私たちの皮膚は、常に細胞が生まれては死んで、垢となって剥がれおちるといったように、常に生まれ変わっている。

そのため傷ついてもすぐに修復される。

また皮膚の表面では種々雑多な細菌とのせめぎあいを演じている。

万一傷口から細菌が入ってきたら、脳の命令を待たずに戦闘を開始するといった皮膚免疫のシステムをもっている。

皮膚は「振動する」という性質をもつ。

そのため、皮膚が空気の振動である音に反応して振動し、それが脳に伝わって恍惚としたり、うっとりしたりさせているようなのである。

さらには、光をひざの裏にあてると体内時計が調整される事実からも、皮膚は光を感じていることがわかる。

さらにはにおいを感じる鼻の粘膜、味を感じる舌、どちらも進化の過程で皮膚の一部が変化してできたものである。

それらの遠い昔の役割が私たちの皮膚に残されていることも徐々にわかってきている。

皮膚の重要な役割は、なんといっても人体の恒常性を維持することである。

さらに皮膚を刺激すると、心をコントロールできるのではないかという仮説も成り立つ。

幼少期の身体接触が多い子どもほど、「自律した」、「協調性のある」、「共感性のある」心に育つことがわかっている。

皮膚にはまだ解明されていない「脳」の機能がある。

今後の研究によってまたあたらな発見があるかもしれない。

楽しみだ。

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