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2020年7月 1日 (水)

AI時代の労働の哲学/稲葉振一郎

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 非常に抽象的なレベルでは、「労働」という言葉は、「人間の生存に必要な活動」くらいの意味合いで用いられます。しかしながら「生存に必要な活動」くらいはどんな生物だってしているわけですから、他の動物と人間とを差別化する何かをここに付け加えないとなりません(後でも少し触れますが、ハンナ・アレントは「労働labor」と「仕事work」を区別した上で、動物もまた「労働」するとします。動物がしないのは「仕事」です。


本書はAIについて論じた本ではない。

「AI時代」というのはネーミングにすぎない。

よく論じられる「AIによって人間の労働が奪われる」ということを述べた本でもない。

本書は労働を主題にした哲学書である。

現代における労働哲学の書物である。

議論全体の基調としては、資本主義経済の下での機械化が人間労働に与えるインパクトの歴史を振り返っておく必要がある、というもの。

20世紀になり、機械化がどんどん進んでいった。

その結果、経済に注目すると、要するにサービス化、知識集約化が進んでいく。

情報技術、あるいは知的財産や人的資本のウェイトが高くなっていく。

労働現場への機械の導入は、労働内容の単純化、コモディティ化を引き起こす。

更にはそうやって単純化された労働、職務、作業は、それ自体機械によって代替される可能性が高まる。

その場合、労働が質的に変化するだけではなく、量的にも労働需要が、雇用が減ることになる。

これが産業革命以来、産業・労働の機械化が雇用に対して引き起こすネガティヴなインパクトとして、真っ先に、かつ繰り返し論じられてきた問題だ。

結果、機械化、そしておそらくはAI化によってもエリート層の「自由な労働」と、それと裏腹な中間層の「不自由で不定型な労働」はなくならないだろう、と常識的には予想されるということはないだろうか。

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