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2020年7月 3日 (金)

ことばの発達の謎を解く/今井むつみ

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 多くの人は、子どもが「大人にことばの意味を直接教わり、間違いを直してもらいながら覚える」と誤解していますが、実際には、子どもは大人の話しかけを自分で分析し、自分でことばの意味を考えて覚えていくのです。

赤ちゃんはなぜ母語を学習できるのか?

お母さんのおなかにいるときから流暢に話ができるようになるまで、子どもが言語のどのような要素をどのように学習しているのか?

「ことばの意味」についてどのように理解しているのか?

「ことばの発達」と「思考の発達」はどのような関係にあるのか?

本書はこれらの問題を、子どもを対象にした実験の結果を紐解きながら、認知心理学・認知科学の視点から考えている。

子どもは、ことばを学習するとともに思考する力を育み深め、知性を発達させていく。

その過程は、私たち大人に人間の学習する力のすごさ、すばらしさをも教えてくれる。

赤ちゃんが最初に学習するのは母語のリズムとイントネーションの特徴だ。

赤ちゃんは生まれた時には人の発声器官がつくり出す物理的な音の違いに非常に敏感に気づくことができる。

自分の母語での音素のカテゴリーができてくるのは、母音で生後4か月くらい、子音で6か月くらいと言われている。

母音の方が音が継続的に続き、はっきり発音されるので、子音よりも早く学習できるのだろう。

赤ちゃんは聞こえてくる言語をただぼんやりと聞いているわけではなく、無意識のうちに鋭い分析をしている。

赤ちゃんは音のつらなりを区切って単語を見つけ、それを記憶にストックしていく赤ちゃん、実はとてもすごいことをしているのだ。

はじめてことばを言ってから最初の数か月の間、赤ちゃんは、最初に一つのモノに対応づけたことばを複数の基準で他のモノに使うことがよく見られる。

赤ちゃんはことばを学習する時、最初は苦労して試行錯誤を重ねながら、なんとか単語を覚え、暫定的にそれに意味をつける。

いくつかでも単語が学習出来たら、覚えた単語の間に共通するパターンをなんとか見つけようとする。

単語の間に共通するパターンをみつけたら、多少の間違いをしてもよいからその知識を新しいことばの学習に使い、語彙を増やし、成長させようとする。

語彙の中の単語の数を増やしたら、さらに単語の間の共通性を分析し、手がかり自体をアップデートする。

同時に、すでに学習した単語自体も新しい単語の学習に使う。

また、新しい単語が語彙に入ってくると、すでに知っていた単語の境界を直して、意味をアップデートしていく。

このプロセスの繰り返しによって、一つ一つのことばの意味を深めていき、同時に語彙を成長させていく。

つまり、システムの要素を学習しながら、同時にシステムの仕組みを探し出そうとする。

要素の間に共通するパターンが部分的にでも見つかるとすぐにそれを新しい要素の学習に使う。

新しい要素が増えるたびに、システムをアップデートし、修正する。

要素が増えると、要素間の細かい関係も前よりもよく見えてくる。

言い換えれば、システムについての知識が増えるわけだ。

その知識をさらに新しい要素の学習に使う。

要素とシステムはつねに連動し、行きつ戻りつしながら互いに互いを引っ張り上げ、成長させている。

実はこの発見、創造、修正の繰り返しのプロセスは、1歳の誕生日前の赤ちゃんがすでに行っている。

赤ちゃんは、言葉を覚え、理解するという過程の中で「発見」や「創造」や「修正」を行っている。

改めて、赤ちゃんって、すごいことを行っているんだと思った。

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