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2020年7月22日 (水)

地上最強の男/百田尚樹

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 敢えて言う。モハメド・アリは単なる偉大なスポーツ選手ではない。彼は「地上最強の男」であった。それゆえにこそ、生きながら伝説の男となった。

本書はヘビー級ボクサーが「地上最強の男」であり、同時にカリスマであった時代、1800年代後半からモハメド・アリが王座を完全に失うまでのおよそ百年の間に生まれた26人のチャンピオンたちの物語である。

26人のチャンピオンのうち、私がリアルタイムで試合を観た選手は、モハメッド・アリ、ジョージ・フォアマン、ジョー・フレイジャーである。

まだ、私が中学生だったころ、キンシャサで行われたアリとフォアマンの試合に夢中になったことを今でも覚えている。

モハメド・アリ以前の世界ヘビー級チャンピオンの中に、アメリカ社会を変えるほどの力を持った偉大な二人の男がいた。

一人は黒人初の世界チャンピオンとなったジャック・ジョンソン。

黒人には公民権さえ与えられていない時代にチャンピオンとなったジョンソンは、黒人差別に対して堂々と「NO!」と言い、白人社会と真っ向から闘った。

もう一人は黒人として二人目の世界ヘビー級チャンピオンとなったジョー・ルイス。

彼はその圧倒的な強さにより、アメリカにおける黒人の地位を引き上げた。

そして、モハメド・アリの登場となる。

アリは、黒人差別が根強く残っていた1960年代のアメリカにおいて白人優越主義を激しく非難した。

ベトナム戦争への徴兵を拒否し、そのためにチャンピオンの座を剝奪された。

しかし、長い法廷闘争の末に無罪を勝ち取り、不屈の精神でカムバックし、チャンピオンの座に返り咲いた。

自らの信念に従って国家と闘うアリの姿に多くの人は共感し、やがて彼はスポーツ界の枠を超え、世界的なヒーローとなった。

本書は単なるヘビー級チャンピオンの物語でなくアメリカの負の歴史の書だ。

特に今のアメリカで起こっているブラック・ライブズ・マター運動の背景を理解するにも参考になる。

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