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2020年7月18日 (土)

遅いインターネット/宇野常寛

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 現在のインターネットは人間を「考えさせない」ための道具になっている。かつてもっとも自由な発信の場として期待されていたインターネットは、いまとなっては、もっとも不自由な場となり僕たちを抑圧している。それも権力によるトップダウン的な監視ではなく、ユーザーひとりひとりのボトムアップの同調圧力によって、インターネットは息苦しさを増している。

みんながどこにいても繋がっているようで、簡単にばらばらになってしまう。

これが今のネット社会。

そんな時代に、ゆっくりと、それぞれが自分の足で立って、強く繋がり合うことを本書は提唱している。

今や、民主主義はインターネットポピュリズムにより暴走するリスクが高まっている。

本書では「民主主義を半分諦めることで守る」ことを提案している。

提案内容は、主に三点。

第1に、民主主義と立憲主義のバランスを後者へ傾ける。

つまり、統治権力を憲法で縛る力を強化することでポピュリズムに走りがちな民主主義の暴走リスクを回避する。

第2に、選挙やデモの中間として、テクノロジーを活用して、日常の中に新しい政治参加の回路を作る。

例えば、ルールメイキングに、職業人が携われるクラウドローのような仕組みを導入する。

第3に、個人が自ら考えて問題設定し、世界を豊かにするためのメディアを構築する。

つまり、これが本書のテーマである「遅いインターネット」運動だ。

インターネットで誰もが素早く発信出来る時代だからこそ、速すぎるインターネットに流されて「じっくり自ら考える」力が欠如しがちではないか。

結果として、インターネットポピュリズムに加担してしまうことにもなる。

そこで、あえてスローに、しっかり読み、しっかり書き、新しく問題設定をし直す力を養うことで、世界の見え方を変えていくというものだ。

すべてではないが一部同意できる部分もある。

ネット社会に一つの警鐘をならす本であろう。

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