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2020年8月16日 (日)

セイバーメトリクスの落とし穴/お股ニキ

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 日本の野球はあまりにも固定観念や先入観、形やイメージに支配されすぎている。大げさかもしれないが、野球は日本社会全体の縮図であるとも言えるし、衰退国家の現状をよく表しているともいえる。

野球というゲームで勝利するために望ましい選手は、攻撃ではより得点を増やし、投球・守備では失点を減らすことのできる選手である。

主観を排除して統計・数値でこれを突き詰めたのがセイバーメトリクスであると言える。

セイバーメトリクスのはしりとなった名著『マネー・ボール』の中で「三振を恐れるな、しかし三振するな」という言葉が出てくる。

これが実に本質を突いている。

三振を恐れてコツコツと当てにいく打撃だけでは、投手は恐怖を感じないし、野手は前に出やすいのでヒットコースも狭まってしまう。

四球を選ぼうとしてボールを見すぎると、ストライクを投げられて追い込まれる。

一方で本当に三振すれば、ほぼ確実にアウトとなってしまう。

野球というスポーツはこのように、相反する要素の両立が多くの場面で必要とされる。
 
0か100かの二元論からなるべく脱却し、最適なバランスを探っていくことが求められるのだ。

ほぼ全てのプレーを統計化できる野球はデータ分析との親和性が高く、テクノロジーの進化の恩恵を受けて発展してきたのは間違いない。

近年のITの発展はすさまじく、今後もさらに新たなトレンドや革命がここから生まれる可能性も高いだろう。

しかし、そんな時代だからあえて言いたいのが、データ分析の危険性である。

データは決して万能ではなく、どんなに高度な統計技術を用いても、主観やバイアスが入るリスクは消し去れない。

元々のデータ自体が事実を100パーセント表現しているとも言いきれない。

数字は重要だが、数字ばかり過剰に追い求めて本質を見失うことはままある。

一般的に、データを見る人ほどその有効性を過大評価し、また全ての要素を均一化しすぎて個別具体的なケースを全て無意味だと切り捨てる傾向がある。

昨今は属人的な要素を嫌う傾向が強いが、レベルの高い才能の世界であればあるほど、その人にしかできないことの価値が高まるのである。

それを理解した上で注意深くデータを扱うべきであり、これまたバランスの問題でもある。

何かある度に指標ばかりに頼る人には「考えるな、感じろ!」と言いたくなってしまう。

数字や指標は極めて大切だが、まずはスポーツの本質や野球という競技自体への理解が必要なのではないだろうか。

そしてそれはビジネスの世界でも同様に言えることである。

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