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2020年8月 2日 (日)

なぜ台湾は新型コロナウイルスを防げたのか/野嶋剛

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 日本で新型コロナウイルス対策が本格的に動き出し、国民的な関心事となったのは3月からだった。しかし、台湾では1月から2月にかけて、政府として、社会として、「やるべきこと」をやり終えていた。

今回のコロナ対策で一番うまくやった国は台湾だろう。

中でも初動の速さは目を見張るものがある。

ウイルスの情報は12月末には情報は台湾政府にも入っていた。

ただ、武漢、肺炎、SARSという断片情報だけでは、まだなんとも掴みようがない話であり、政府として動きを取ることはできない。

当時、台湾の保健衛生を担当する衛生福利部の傘下にある疾病管制署の副署長であった羅一鈞は、数日間、睡眠時間を削って必死に中国と台湾のネットを見つめ続けていた。

それは、台湾政府が防衛策に動くべきかどうか、判断材料となる何らかの「証拠」を探し出すためだ。

そのようにして、たどり着いたのが、武漢市衛生健康委員会の通達だった。

その内容はこんなものだった。

「原因不明の肺炎治療状況に関する武漢市衛生健康委員会の緊急通知」というタイトルで、

「各関係医療機関へ:上部機関の緊急通知によれば、当市華南海鮮市場で原因不明の肺炎患者が現れている。

対応作業のため、各単位は至急この1週間に診察した類似する原因不明の肺炎患者の統計を取り、本日午後4時前に統計表を市衛生健康委員会医政医管処までメールで送るように」と書かれていた。

日付は12月30日だった。

この文書は武漢市が正式に発出したものであり、その真実性は高いことが見て取れた。

羅一鈞はそのまま睡眠を取らずに、早朝までにこの通知に加えて、武漢市で27人の感染者が確認され、うち7人は重篤な症状であるとの別ルートで得た情報も含めた資料を一気にまとめた。

そして自らが所属する衛生福利部に対して緊急レポートを提出し、すぐさま台湾政府内で共有された。

この12月31日に、台湾政府は対外的にも重要なアクションをとっている。

中国政府に対して、事実確認のための問い合わせを送った。

さらにWHOに対して、通報を行っている。

情報の把握、閣僚会議、検疫体制の強化、中国への確認、WHOへの通報、そして、国民への注意喚起。

これだけのメニューが12月31日に行われた。

新型コロナウイルスの特徴は、その狡猾さにあったというのが衆目の一致するところだ。

潜伏期間が比較的長く、発症しない人や軽症で終わる人も多いが、約2割の人は重症化し肺炎を引き起こす。

肺炎に至るとなかなか治療は難しい。

やっかいなのは、症状が出ていない不顕性の感染者がさらなる感染を引き起こす点だ。

静かにこっそりと社会のなかに潜り込み、いつの間にか感染者を広げている。

だから、初動が大事なのだ。

日本はこれができなかった。

情報に対する感度の低さは、あの戦争での敗戦にもつながった。

今後はますますこの情報が大事な時代に突入するのではないだろうか。

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