感情リセット術/樺沢紫苑
近年の脳科学研究によって、「感情」や「気分」は物質に還元されることがわかってきました。つまり、「心」の変化と思われていたことが、実は脳内物質やホルモンの増減であると解明されています。
言い換えると、「苦しい」や「楽しい」といった感情は、脳内物質、ホルモンの変化にすぎないのです。
世の中の悩みの9割は、「ネガティブな感情」が原因だと著者はいう。
そしてそのようなネガティブな感情は脳内物質やホルモンの変化によるという。
例えば、「苦しい」状態では、「ノルアドレナリン」「アドレナリン」「コーチゾール」という「3大ストレスホルモン」が分泌される。
「楽しい」もまた脳内物質の変化で、楽しいときに分泌する脳内物質が「ドーパミン」「エンドルフィン」「セロトニン」。
ドーパミンは、「幸福物質」とも呼ばれ、目標を達成したとき、夢や願望が実現したときに分泌される。
「やったー!」と達成感を感じているときは、ドーパミンが出ている状態。
あるいは、何かこれから楽しいことがあるという「ワクワク」した気分のときにも分泌される。
また、大好きなあの人のことを考えて「ドキドキ」するときにも出てくる。
ドーパミンは、目標を設定し、困難を克服し、自分の壁やハードルを突破したときに分泌される。
何かにチャレンジし、人間を進歩と向上へ駆り立てる、モチベーションの源となる物質だ。
ドーパミンは、簡単すぎる課題をクリアしても分泌されません。ある程度の難易度、困難を乗り越えてはじめて分泌される。
また、脳のなかでは、「やらされ感」を持つとノルアドレナリンが分泌され、「自発的」にやればドーパミンが分泌される。
モチベーションをつかさどる、脳の「側坐核」。
この部分は「報酬」をもらうことで興奮する。
楽しい、嬉しいといった感情はもちろん、仕事で何かを達成したり、人からほめられたり、誰かに愛されたり。こうした「精神的な報酬」が側坐核を興奮させ、やる気物質ドーパミンの分泌をうながしてくれる。
報酬を与えると脳は勝手に頑張ってくれる。
ドーパミンを出し続け、モチベーションを常に高く保つには、より高い目標設定と、今まで以上のご褒美を自分にあげることが重要。
人間が持つモチベーションはたった2つしかない。
「楽しさ、褒美、ほめられるために頑張る=快適なことを求める」ドーパミン型モチベーションと、「恐怖や不快や叱られることを避ける=逃げるために頑張る」ノルアドレナリン型モチベーション。
この2つだけ。
なぜ、追い込まれると、実力以上の力を発揮できるのか?
これもまた、脳内物質で説明できる。
人は追い込まれると、ノルアドレナリンとアドレナリンが分泌される。
「苦しい」の元になるこれらの脳内物質だが、元々は、危険な状態から一刻も早く抜け出すために、心と身体の能力を瞬時に高める物質。
ノルアドレナリンは集中力を高め、脳機能を活性化する。
アドレナリンは筋力をアップし、身体能力を高める。
つまり、人は追い込まれたときに、高い能力を発揮できるように設計されているのだ。
「火事場の馬鹿力」は、ありえる話。
マッサージを受けているときの「気持ちよさ」や「リラックス感」、大自然のなかで感じられる「やすらぎ」は、セロトニンによるもの。
セロトニンは「癒しの物質」とも呼ばれる。
笑顔をつくるだけで、感情がリセットされるのも脳内物質の働き。
笑顔をつくるだけで、感情をリセットする3種類の脳内物質が分泌される。
まず、癒しの脳内物質、セロトニン。
セロトニンは表情筋をコントロールをしている。
逆も真なりで、「自然な笑顔」をつくるだけでセロトニンを活性化することができる。
2つ目が、幸福物質のドーパミン。
ドーパミンが分泌されると、楽しい、幸せな気持ちになる。
3つ目が、脳内麻薬エンドルフィン。
エンドルフィンが分泌されると、感謝、感動など幸福感が最高レベルに増幅される。
さらに、笑顔はストレスホルモンの働きを低下させ、血圧や血糖値も下げる。
副交感神経を優位にしてリラックスをもたらす。
笑顔は、脳科学的にも高い感情リセット効果があることが証明されている。
成長ホルモンを分泌させる簡単な方法が、「運動」と「睡眠」。
運動は、セロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリンという主要な脳内物質の放出を調整する。
いつも「笑顔」で過ごし、適度な「運動」を習慣化し、よい「睡眠」をとること。
これが重要ということであろう。
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